第3話 自覚しろ!!

「おい。鈴谷」


トムは廊下で大和と歩いている時、突然呼び止められた。


「何ですか?大和田先生」


副担任の大和田先生だ。夏の暑さに耐えきれず、よくハンカチで頬を拭いている。見た目は髪の毛根が無い中年のおっさんなのだが、本当は20代後半らしい。


「お前、髪伸ばしすぎだ。しかも、こんな暑いのに……」


確かにトムの前髪は目に少しかぶり、ワイシャツにも襟足がかかっていた。


「お前、坊主にして見たらどうだ?涼しいぞー坊主は」


(あんたは万年それ以上だからな。ツルツルだからな)


トムの目線は、大和田先生の目のさらに上をいっていた。


「なんだ?どこ見てんだ。鈴谷」


「いや。どこも見てないです」


正直、トムは笑いをこらえていた。少しでも、気を緩めたら吹き出してしまいそうだった。


「逆に、大和田先生の頭はいつでも寒そうですね」


と、大和が不意に話に入り込んで来た。しかも、言ってはいけないような言葉を挟んで。


(うぉぉおおい!!それ心の中で収めてよ。俺も言いたかったけど。ほら、大和田の様子が……)


「何言ってんだ?大成。俺は、こんなに汗かいてんだぞ。寒いわけないだろ」


人は人に言われたことを素直に受け取れない時がある。しかし、言った人と第三者はこう思うのだ。






(自覚無しか!!!)

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