第2話 ふつーの定義

(くっ今日が公開授業だったとは......)


隣の席の生徒、大和が


「なあなあトム。昨日の命令、しっかりやってくれよ。俺もやらされたんだからさ」


とコソコソ声で言ってくる。誰が始めたかわからないループが無限に続くんだろう。


「一つ聞いていい?大和の前って誰だった?」


トムはこんな風に聞いていき、発信源を辿ろうとする。


「確か陸斗かな」


「(やっぱかー。絶対、陸斗だな。もう発信源に辿り着いちゃったよ。)あともう一つ聞いていい?」


「いいよ」


「この状況って何?」


と大和が前に目を向ける。そこには、担任の大和田先生の後ろに、立っている保護者たち。


「え?何が?」


「何がって。なんで、保護者が先生の後ろにいるの?」


「公開授業だからでしょ」


「いやだから、それは知ってるよ!!だけど、あれじゃ黒板見えないよね!!ものすごい邪魔だよね」


指を横に振る大和。


「チッチッチ。ダメだなートムはー。こんな中でも、ふつーに見えなきゃ」


「え?これふつーなの?」


「逆にふつーじゃないの?」


真顔で答える大和。この顔は嘘をついてない顔だ。


「あははーそうだよね。これふつーだよね。そーだよね」


「変なトムだなー」


と横に向いていた体を元に戻し、再び黒板の文字を写し始める大和。


(あーなんか、もういいやー......)




公開授業の中でありながら、夢に堕ちるトムであった。

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