お題「夕焼けの見える教室 が舞台で『苺』が出てくる戦う話」
「こっちを取って……あ!」
「相変わらず抜けてんのな。角もらいーっ」
夕日に照らされた教室内で音を立てて白い石が黒に裏返っていく。数は数えてないけれど同じくらいの数になってしまっただろうか。それとも少し負けているんだろうか。
「連勝なんかさせねーからな」
「それ、フラグなんじゃないの?」
自分の石を置いて、黒をまた白く裏返す。空いているマスはもうあまりない。決着がつくのももう、すぐだろう。
その頃には下校の時刻になるはずだ。
「俺が勝ったらお前、明日いちご柄のパンツな」
「は?」
「ほら、昔良く履いてたじゃん」
「いつの話してんの、っていうかそんなのとっくに履けないし捨ててるし」
「なんだよ、結構面白いと思ったのに」
いかにも不満そうな表情を浮かべているのが見えて私は思わず吹き出した。いつもよりも随分と幼く見えたからだ。
なるほど、確かにあんな頃にはまだいちごパンツを履いていたかもしれない。
「こんなことできるのもあと少しだしなー」
「別に三年になっても続けてもいいんだよ?」
「クラス別になったらなんとなく気不味いじゃん?」
そういうものだろうか。そうかもしれない。受験も控えている部活の追い込み……は帰宅部である自分たちには関係ない話だ。
だけどそんな風に遊んでいる姿は気に障る可能性もある。帰宅部というのはいつだって肩身の狭い存在だ。
「よし、これで王手じゃね?」
いつの間にかあと一箇所になっていた盤上を見て私は再び思わず吹き出した。抜けているのは一体どっちだ。
「何言ってるの。ほら、こっちもひっくり返る」
「え? ……あー!」
三方向にひっくり返した白はそれなりに盤を染めている。数えなくても分かったのだろう。頭を抱えたままの幼馴染に私は言ってやった。
「アンタにいちごのパンツは酷だから、ショートケーキで勘弁してあげる」
それで今日の分はチャラにして……そう、そのついでに来年の話をちゃんとするのもいいじゃないか。
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