4-2 夢のモテ期が強襲してきても俺は学園で自分探しを(物理)
ハローハロー。
そんなわけで俺は、リータとサラという二大ヒロインの鞘当てに挟まれながら針のむしろのような状況で授業を受けています。
で、まず1つ目の大問題として、授業内容がさっぱりわかりません。
予習復習とかそういう次元の話ではなく、さりとてこの重く冷たい空気の雰囲気で集中できないとかそういうものでもなく、ただただ、教師が教えている内容がまったく理解できないのです。
いやホント、文字通りに。
そもそも教科が意味不明ですからね。聞いたこともないような、謎の単語が教科名ですよ。しかもご丁寧に教科書もそれ仕様です。なんでしょうこれ。
これは推測ですが、おそらくこの世界は俺だけではなく、サラの潜在意識も混ざって構築されているということなのでしょう。
いかにも流れ者な雰囲気であるリータはちゃんとした学校に行っていたのかどうかもわかりませんが、サラはあのような施設を任されるくらいですから、彼女の世界ではある程度高度な教育を受けていたはずです。おそらく、現代日本よりもさらに高度なものを。
まあ、このあたりに関してはディテールは重要ではないということなのでしょう。
授業という時間、もっと率直にいえばそのイベントさえちゃんと処理されればいいといったところですかね。
なんの話でしたっけ。
ああ、そうです、授業内容がわからないって話でしたね。
まあ、ろくに予習も復習もしていないんだから仕方ありません。
それに両側の席からの謎の重圧もヒドイですしね。
とはいえ授業内容はともかく、重圧は消えることはないどころかさらにエスカレートするのですが。
「じゃあ、どちらがコウさんに相応しいか、決着をつけようじゃないのさ!」
「あ? なに勝手なこといってんだお前?」
はい、これが放課後イベントの第一声です。舞台は屋上。風が我々3人の間を吹き抜けます。
いや、ホントなにをいっているんでしょうね。
そもそもこのサラという女性に関していえば、俺からしてみても『お前は誰だ』状態なんですが。
まあ、通学路でぶつかった転校生なんで情報が必要ではないといえば必要ないんですが、なまじその前に少しだけ面識ができていただけにチグハグさが際立ちます。
なにしろ正直、名前以外の情報はほとんどありません。
青タイツとタチの悪い仕事をしていたこと、あとはせいぜいあのヴァイルとかいう奴の同僚ってことぐらいでしょう。もっとも、ヴァイルの方の情報もほとんど無いのでそれで付加される情報も皆無なんですが。
まあでもここだけの話、実はリータも似たようなものではあるんですが。
出会ってから一週間経ってませんよね、まだ。それでよく幼馴染設定なんで通したものですよね。
まあ、設定のアラに突っ込んでいても仕方ありません。なにしろ俺はただの平凡な高校生なのですから。設定など知るはずもないのです。
それでえっと、この人たちはいったいどういった了見で俺の所有権的ななにかを争っておられるのですか?
もしかしてこれがモテ期とかいうやつですか?
実在したんです?
しかしいざその状況がやって来てみると、嬉しいかどうかはかなり微妙なラインですね。
というか、うっとおしいの方が勝る感じです。かなりのレベルで。
なんか俺がモテているというよりは、俺という領土を巡って互いに領空侵犯しながら俺の国土上空で勝手に航空戦をやってる感じじゃないですか、これ?
俺である必要ありますか。
それを考えた時、俺は、ある疑問が浮かびました。
この茶番を仕組んだのは誰か?
確かにここは表面上は俺の世界です。
俺の記憶を元に構築された通学路、街並み、高校。
そこに不自然なまでにテンプレートな役割を与えられた面々を配置して行う高校生活のリプレイです。
しかし、これは俺の考えた世界ではありません。
俺は高校生活にい思い出はありませんが、やり直したいとも思いませんから。
では誰が?
それとも、もっと別の誰か?
その謎を解く鍵は、この茶番にあると見ましたよ。
「ふたりとも、もうこれ以上俺のために争うのは止めてくれ!」
完全な棒読みでそう叫んで、俺は彼女たちの争いに割って入ります。
誰がこの世界を望んでいるのか。
その謎を解き明かそうというのです。
もちろん、二人揃って俺を怪訝な目で見てきます。
「ちょっと、いったいどういうつもり」
「そもそもだな、なんでテメエのために争わないといけねーんだよ……いや、幼馴染だしそりゃ争うけど、これ、そういうのじゃねーからな! 勘違いすんなよな!」
どこか戸惑いながらもそっけない態度を保とうとするうサラと、自分がなにを言っているのかさえわからなくなり早口でツンデレみたいなことを口走るリータ。
なるほど。大体わかってきましたよ。この世界の本当の正体が。
「ずっと黙っていたけれど、俺には、他に好きな人がいるんだ」
またも棒読み。
ずっと黙っていたとか言っていますが、もちろんそんな話があったことなどありません。
高校時代もですよ、ええ。俺はずっと一人でしたから。
まあ、俺の過去はどうでもいいのです。
ここで重要なのは、俺の言葉にどういった反応を示すかなのです。
「ちょっと……嘘でしょう。話が違うわよ」
あからさまに動揺して、サラが俺に詰め寄ってきます。
そうです、この反応こそが、この世界の正体です。
「そうですよ。ここはあなただけの世界じゃない。ここは俺の世界でもあるんだ。それに俺は本当の自分の世界に戻りたいですからね」
つまらない懐かしい日々を思い出してしまって、俺は少しだけあの頃に戻りたいと思ったのも事実です。
でも、もう十分。
謎を解体して、もう1回リセットしてしまおうじゃないですか。
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