夢の学園世界
4-1 夢の学園生活の不自然な現実
ハローハロー。
俺は今高校生として、いつか来た通学路をあの日々と同じように歩いています。
しかし通学路の記憶というのは曖昧なもので、三年間ほぼ毎日同じ道を通ってきたにも関わらず、細部はほとんど覚えていないものらしいです。
制服であるブレザーにに身を包み、見慣れた光景とこうだったかわからない光景が入り混じった道をとぼとぼと歩きます。
そんな風にして、俺は見たことのあるはずなのにあやふやな道を進んで学校へと向かいます。
まず向かうはバス停へ。
そういったことを考えながら角を曲がった時でした。
「うおっ!」「キャッ!」
誰かの身体と俺の身体が勢いよく衝突します。
それはもう、典型的に。
いやまあ典型的といっても、高校3年間でただの一度も起こらなかったアクシデントですが。
ぶつかった相手を確認すると、これまた典型的に、これまで見たこともない美しくも可愛らしい女子高生でした。名前はサラ……、でしたっけ。
いや、知らない女子高生です。そうです。
思わずマジマジと観察してしまいます。
灰色にも見える色味の薄い髪。
どこか幼さを残しながらも疲れたようにも見える顔。
そして顔つきのわりに出るところは出ている、肉付きの良い身体。タイツのときにも思ったことですけれど、ちょっと刺激が強いですね。
制服からして俺と同じ高校のようですが、これが初対面だと思います。
短めのスカートからのぞく白い生足が眩しいですね。
「え? どこ見てるんですか! 変態! スケベ!」
「えっ!?」
俺の視線に気づいて、その少女がものすごい勢いでカバンを振り回します。
ビュンと空を切る音を立てたカバンが、モロに俺の顔を打ち付けます。
わりと本気で意識が飛びましたよ、これ。
そしてそんなことをしている間にその女子高生はさっさと行ってしまい、ひとり残された俺は、見事にバスにも乗り遅れてしまったのでした。
「と、いうわけだったんですよ。まったく、朝からひどい目に合いました」
「アッハッハ、そりゃ大変だったことで。でもそれ、全面的にテメエが悪いな」
なんとか無事に遅刻もせず教室にたどり着いた俺は、朝のホームルーム前に幼馴染である隣の席のリータにそんなことを語ります。
このリータという少女、高校時代ろくに友達もいなかった俺に降って湧いた幼馴染なのですが、いかんせん俺は実はこの少女のこともほとんど知りません。いやそもそも少女なのかどうかもわからないのですが。
わかっていることは口が悪く性格も悪い癖に顔は異常に良い。あと耳の形が人間のそれではない。これくらいです。あと……魔法?
しかし服装が変わると印象も随分変わるものですね。元々年齢不詳気味だった顔の作りだったこともあり、本当に女子高生に見えますもの。
むしろ問題は俺の方でしょう。高校時代からどれだけ堕落したか。
いや、高校時代は今なのですが。
「まあ、テメエの変態自慢はどうでもいいや。そんなことよりもよ、どうやらウチのクラスに今日から転校生が来るらしいんだが、なんか聞いているか?」
「転校生!」
なんとまあベタな展開でしょうか。
なんの情報も聞いてはいませんが、まあ概ね察しはつきます。
そう言っているとまさにそのタイミングで担任の教師がやってきました。
「あー、お前ら静かにしろ! いいから席につけ。今日は突然だが、このクラスに転校生が来ることになったので紹介する。入ってこい」
そう促されて入ってきたのはまさに今日の朝、俺とぶつかったあの女子高生でした。転校生ならこれまで見たこともないはずですね。納得です。
「えーと親の都合? とかまあ、そんな感じの理由で今日からこのクラスで一緒に学校生活を送ることになった、サラ・マーです。サラ、と呼んでください」
ぶっきらぼうというかしどろもどろというか台本棒読みというか、とにかくそんな感じの自己紹介を終え、サラと名乗った少女はおどおどとなにをしたらいいのか迷いを隠さずに立っています。
それに対するクラスの反応は賑やかなのですがいかにもガヤで、状況になんの影響も及ぼしません。
「転校生はそうだな、ちょうど阿柄の隣が空いているな、あそこの席を使ってくれ」
教師がそう言うと、俺も自分のリータとは反対側の席が空席だったことに気付きます。気付かないものですね。
一方の転校生もそう指名されたことで俺を見て叫びました。
「あっ、アンタは朝の変態スケベ野郎!」
「いや、変態スケベ野郎って……」
いやあ、ヒドイあだ名もあったものです。
まあ、本来の高校生活ではあだ名を付けられるような存在感もなく過ごしたわけですから、たまにはこういうのもありということでしょうか。しかし変態スケベ野郎はひどい。
しかしそのことへの反論は思わぬところから上がりました。
「いきなりスケベ野郎呼ばわりとか、お前、こいつのなんなんだ? あ?」
典型的な幼馴染セリフを吐いてリータがサラを威嚇します
「え? それはこっちのセリフですけれども。幼馴染だからって、大きな顔しないでもらえるませんかあ?」
「うっせーよ。というか、お前、なんでここにいるんだよ?」
まあ、それについては俺もとても疑問に思いますが、あの爆発でしたからね。巻き込まれたなら仕方がないことです。
なんにしても、俺を挟んでの言い争いは勘弁願いたいところですね。
そもそもこの謎だらけの状況にしても、サラが最後にドッカンドッカンリータの地雷を踏みまくり爆発させまくりなトークで文字通りの大爆発から起こったことじゃないですか。
この、最初から波乱の予感しか感じない学園生活、いったいどうなってしまうんでしょうね?
そもそも、この学園生活とはいったい、なんなのでしょう。
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