第37話
「ソラノって呼ばれるの久しぶりでびっくりしました」
ソラノは少し声のトーン高めで言って、俺の手を両手で握ってくれた。くそ!!ばか!!なんで俺、タイツ着てないんだ!!!グズ!!!自分を頭の中で百回くらい罵った。
「あ、握手とかあんまり好きじゃなかったですか?」
「え?」
「すごく悔しそうな顔してたので……」
「あ、これは違うんです!別件です!俺も握手して喋ることが出来るなんて嬉しいです!カナチ大好きです!」
昨日知ったけどな!!!
「ありがとうございます!」
ソラノは歯を見せて笑う。
「でも、どうしてこんなところに……」
まさか、きりぼし大根的なあれか!?偵察!?だが、俺の雷天黒斧は昨日でもう知れ渡っているはずだ。
「たまたまもう少し離れたとこで練習してたらすごい爆発が聞こえたので見に来たんですよ。そしたら、倒れてる人を見かけて……」
「あーなるほど……」
すごくいい声だ……。しかもいい人!
「近付いたら昨日の敗者復活戦で見た人だったから驚きました」
「俺もびっくりしました。まさか人が来てくれて、しかも、それがソラノさんだなんて」
「ちょっと私の偵察かファンの方なのかな?って思いました」
ですよねー。
「違うんですよ、いろいろとユニーク武装の研究をしてて」
「なるほど。ユニーク武装は説明がないですからね」
「そうなんですよ……さっき突然爆発して……あのザマです」
自嘲気味に笑う。ていうか、この人はユニーク武装を出したことないんだよな。なんか情報でも探るかな?と思ったがこの人は恩人だ。そういうことはやめておこう。
まぁ話もキリがいいしここらへんで別れることにするか。明日は戦うし仲良くなってもやり辛い。ほんとは声優さんと仲良くなりたいけど。マジで。
「じゃあ、明日は敵同士ですけどよろしくお願いしますね。ソラノさん」
「あ、はい……」
ソラノは不思議そうに言った。
え?俺何か変なこと言った????俺がおどおどしていると、ソラノが続けてくれた。
「あ、いや、聞かないんですね……私のユニーク武装のこと」
あー、そういうことか。
「気になるけど別に聞きませんよ?」
教えてくれるもんなら教えてくれてもいいけど。
「最近いつも聞かれるからウンザリしてたんですよ。違う話しててもだいたいその話になるし……。まぁ、今日は結局自分から話しちゃったんですけどね!」
ソラノがにかっと笑う。カレンと違う種類の笑顔だなとなんとなく思った。何と言うか、自分を魅力的に見せる笑い方を知っているというか。ほんとに引き込まれそうだ。
この流れだから一つ気になることがあるから聞いてみよう。
「じゃあ、結局話しちゃったついでに聞いてもいいですか?」
「はい、どうぞ?」
ソラノはスマイルを崩さずに言う。
「何でユニーク武装を出さないんですか?」
そこが気になった。もしかして万が一、速度制限なのかもしれないし、きりぼし大根対策だったのかもしれないし。
「あー!気になりますよね」
「はい、もしかしたらきりぼし大根さん対策かな?とも思ったんですけど」
一応、さんを付ける。俺って紳士!
「あー、アレ対策なんかじゃないですよ」
おっと?言葉に棘があったぞい?これはソラノさんも被害者で?
「じゃ……じゃあ……」
「ただ単純に私より強い人がいないから」
ソラノはスマイルのまま言い切った。
「……」
少し寒気が走った。
「カケルさんは特別なのでちょっとヒントをあげちゃいます」
そう言うとソラノは人差し指をピンと立てた。
「私のユニーク武装は隠してもアレの対策にはなり得ません!」
語尾に音符マークでも点いているかのようなテンションで言う。
つまり、ユニーク武装は武器であり、斬撃であるということか……?
「……カケルさんなら、もしかしたら初お披露目できるかもですね」
「……。そうなるように頑張ります……」
俺はそう言うしかできなかった。笑っているが彼女の声、雰囲気は本気そのもの、これが殺気というものなら殺気なのだろう。ソラノが手を置いている日本刀がいつ俺に向かって抜かれてもおかしくないという気にもさせられた。
なんだこの声優……めっちゃ怖い。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます