第36話

 HPがゼロになるとその場で倒れて動くことが出来なくなる。すぐにギルドや、拠点にリスポーンすることはできるが、それだと所持金が半額になってしまう。強制リスポーンまではまだ時間があるし考えをまとめるためにしばらくこのままでいようと思う。

 ごめんなさい!嘘です!誰か助けて!!通りかかって!!誰かー!!!

 モンスターは俺が戦闘不能になったと見ると全く興味が無くなり、見向きもしない。まぁ興味があって食べられてもそれはそれでトラウマモノなんだが。こんなとこ誰も来ないよなー。

 ていうか、今の何?排熱ってレベルじゃなかったぞ……あれはもう完全に攻撃だ。ん?という事は、あれを反対に向けて攻撃?いや、デメリットのダメージが入るから、爆発を反対に向けても俺はダメージ食らうってことあるよな?それに排熱口を向こうにしたら俺に刃が向いてるし……顔面に突き刺さって兜割になるぞ……最悪ヘッドショット扱い。うーん……。

 そんなことを考えていると俺の目の前の強制リスポーンまでの表示があと二分になっていた。あー、所持金半額かー。こんなことならお金貯めないで武器とか車とかのカスタムしとけばよかった……。何年か前に仮想通貨全部なくなった人ってこんな気持ちだったんだろうか……。

 それにしてもいい天気だ……。感覚フィードバックのタイツを今日は着けていないので風は感じないが、何故か気持ちいい……。

 目を瞑ってリスポーンの時を待っていると、草原の草を踏む音が聞こえてきた。

 どうせモンスターが近くにいたんだろうと無視をしていると、風を切るような音がして、そのあとにモンスターの悲鳴が聞こえる。

 「ん?」

 そっちの方を振り向くとニーハイを履いた足が見えた。残念ながらスカートではなくショートパンツ。顔を見ると、日差しのせいでよく顔がわからなかった。ていうか人だ!助かった!!

 「あの……。大丈夫ですか?」

 その声は、とっても澄んでいるのに、甘くて、奥底でスパイスが効いたような声だった。今見てる晴天の先には激しい乱気流があるのにそれが見えないのと同じような、そんな感じ。

 「あの……?」

 そんな声に聞き惚れていたせいで返事が遅れた。

 「あ、よかったら……蘇生してもらえませんか……?お礼しますんで……」

 「いいですよ」

 ニーハイの方はすぐに蘇生アイテムを使ってくれた。粉がかかって光に包まれると一気に動けるようになる。

 俺は上半身を起こした。

 「ふう……ありがとうございます。助かりました」

 「いいえ、困ったときはお互い様です」

 見るとそこには茶色の髪を二つにまとめて、そのおさげを前に垂らしている女の子が立っていた。顔は若干幼いような雰囲気だが、声は先程も感じたように吸い込まれそうな魅力を持っていた。

 「お礼は同じアイテムでいいですか?」

 基本はそれでアイテムを渡してお別れになる。

 「いいですよそれで」

 快く承諾してくれて助かった。中にはちょっと色付けろみたいなこと言う人もいるし。

 立ち上がると意外と身長が高いことがわかる、少し驚いたがアイテムを渡すとニコリと笑ってくれた。俺が高身長に設定していたのに差が十センチもない気がする。まぁ武器種によっては有利だったりするもんね。

 そして、気が付いた。を持っていることに。

 俺が刀に気が付いたのがわかったのだろう。日本刀を持った女性はニコリと笑って口を開いた。

 「はじめまして、カケルさん」

 その声で呼ばれると謎の幸福感に襲われた。これが声優の力か!すぎょい!!!!

 「ソラノ……さんですか」

 「はい、ソラノ……。大野城亜弥香です」

 

 

 

 

 

 

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