第30話
そういえば、森でスキルを覚えたよな。逃げ回りながらオプションメニューを開く。そのくらいはできる。スキル一覧から入手順に切り替えると一番上に現れた。エレメントアップ【小】。これだ、効果は「三秒だけ属性攻撃力をほんの少しあげる」少しずつ叩き込むから上がるものは全部使うべきだ。だが三秒……本当に当てる直前じゃないとダメだ。しかもクイックボタンに設定もしてないし、ミスってしまいそうだ。
「おわ!」
足に銃弾が掠った。少し刺激が走り、バランスを崩す。とスキル使用を押してしまった。
しまった!と思ったが、スキルは使用されなかった。よく見るとスキルを使用する相手を選べと書かれている。普通、自身にかけるバフなら選択する相手など選べず、すぐに使用される。
対象を見ると、俺と雷天黒斧となっていた。
「!?」
どういうことだ……。
弾丸の雨が止む。相変わらずきりぼし大根はこちらにガトリング砲を向けたまま睨んでいる。俺はこのタイミングに仕掛けたかったが、まだトリガーがリロードされていない。だから立ち止まって試してみた。
スキルを雷天黒斧に使う。
雷天黒斧にバフのエフェクトがかかる。そしてそのバフの光をいつも煙を吐く排熱口が吸収した。
!?
そして、いつものごとく排熱した。
「うわ!まじか!」
ただでさえHP減ってるのにやめてくれ!
なに?これプレイヤーにも雷天黒斧にもバフかけれて倍だね!でも雷天黒斧にかけるとダメージ食らうよって奴?まぁそう考えると普通に強い気がするけど、どうなの?
「ははははははは!!何やってんだよお前!!!自爆して!!あはははははは!!!!」
きりぼし大根はそれはもう嬉しそうに奇声を発する。
「さっさと死ね!逃げずにさァァ!!!!」
そしてバレルが回転を始める音がする。今度は距離もあったし、ライジングスキルをリチャージできたのでそれを使う。
掃射が始まるが今は余裕で避けきれる。観客は俺が逃げてばっかりなのに不満を持ち始めたようでブーイングや野次のようなものが混じり始めた。こっちは真剣にやってんだよ!!
次のリロードから逆転が始まるから待っとけ……。そう思いながら雷天黒斧を見ると、刃の部分がいつもより光っていた。
なんだこりゃ……。
ステータスの状態を確認する。エレメントアップ【小】がある。バフが消えていない。三秒以上経ってるよな。これ。
もしかして……。
一か八か!
オプションからスキルを選択。エレメントアップ【小】。対象、雷天黒斧。排熱のダメージを受ける。ステータス確認。
「……いける……」
そこにはエレメントアップ【小】が二つ付いていた!雷天黒斧はダメージを受ける代わりにバフを長時間ないし、永続的にかけることが出来るんだ!!
【小】系はもともとクズスキル……リチャージは数秒で終わる!逃げながら限界までバフかけてやる……。
「うおおおおおおお!!!!!」
エレメントアップ【小】。
「あつ!」
エレメントアップ【小】。
「まだいける!」
エレメントアップ【小】。
エレメントアップ【小】。
エレメントアップ【小】。
エレメントアップ【小】。
エレメントアップ【小】。エレメントアップ【小】。エレメントアップ【小】。
HPが二割を切った。ライジングスキルも効果が切れる。また雷天黒斧を盾にする。刃の部分の光り方がえげつないものになってきた!もっと輝きやがれ!!!
エレメントアップ【小】。
エレメントアップ【小】。
エレメントアップ【小】。
「くっ……!」
弾丸が掠りダメージを受ける。だがギリギリまで高める。
エレメントアップ【小】。エレメントアップ【小】。エレメントアップ【小】。
エレメントアップ【小】。エレメントアップ【小】。エレメントアップ【小】。
エレメントアップ【小】。エレメントアップ【小】。エレメントアップ【小】。
もっともっと!!!
エレメントアップ【小】。
ガトリング砲の掃射が止まり、リロードが始まる。
「よっしゃ!」
俺は駆け出す。これにかける!次のリロードまで待てば確実に負ける!
エレメントアップ【小】。
「お前、なにやってんだよ」
エレメントアップ【小】。
きりぼし大根はさっきのように睨んではいるが、少し歪んでいて、声も心なしか震えていた。そりゃそうだ、怖いだろう!お前から見たらクズスキルを武器にかけて俺がダメージ受けてるんだからな!!!!狂ったようにしか見えないよな!!
そんでもってこの雷天黒斧の輝き。それはまさに
「お前を倒すんだよ。クソ野郎!!!」
ブーストジャンプ。
俺は高く上に跳躍した。
エレメントアップ【小】。
エレメントアップ【小】。
エレメントアップ【小】。
もう俺のHPはもう限界だ。だがこれでいい。
「いくぞおおお!!!!」
「やめろォォォォォ!!きいいい!!!」
きりぼし大根は気持ち悪く叫ぶ。リロードが終わった。バレルの回転が始まる。
だが、もう遅い!!!!!!
「うおおおおおおおおおおおあああああああああああ!!!!!!!!!!」
叫び。きりぼし大根の頭部に雷天黒斧を撃ちつけた瞬間にトリガーを引く。
カチリと音がすると、爆発。
と同時に、雷が落ちた。
ただ、それは落雷、そんな自然現象を表す言葉で表現していいものではなかった。あとで聞いた話だが、その落雷は闘技場を埋め尽くし、観客
「はぁ……はぁ……」
ゆっくりと俺は呼吸をする。目がチカチカする。光が凄すぎてやばかった。
ぶしゅうという音を立てて雷天黒斧は排熱をし、マイペースに俺にダメージを与える。お前ヤマトみたいなやつだな……。俺のHPゲージは減って、ギリギリで止まる。計算通り。
闘技場内は歓声というよりは騒めきという感じだった。
目が慣れてくると足元にはほぼ真っ裸のきりぼし大根が炭のようになって倒れていた。
試合終了のブザーが鳴る。
「勝者、カケル」
その声が響くと、歓声が上がった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます