第29話
俺の拳は届いた、素手によるダメージは無効化していなかったらしい。だがそんなことはどうでもいい。ヤマトを、そして何よりも俺を侮辱した。
「負けてやっただと?てめぇ」
「そうだろ、あの不自然な負け方!そうだろ!」
そう言いながら立ち上がる。
「お前、白王だろ?お前プライドないのか?」
「は?……プライド?あるに決まってるだろ!」
「ならどうして、そんなクソみてぇなこと言える……」
「それはお前とヤマトが急に――――」
「あの子がそんなことするわけねぇだろぉ!!!」
もう一度殴り掛かるがさすがにそれは避ける。
「そうじゃなかったらなんなんだ!なんであそこで止まった!?なんでパンツを見せてもらった!?」
もう自分がどれだけ気持ち悪いことを言っているのかわかっていないらしい。
「俺が速度制限食らってたからだよ!!!悪いか!!!!」
本当の事だ。
「信じられるかあああああああああああああアアアアアァァァァァア!!!!」
きりぼし大根は発狂しながらもともと装備していたガトリング砲を取り出した。
「お前、俺を!俺を!バカにするのもいい加減にしろよ!!あああああああああああああああああ!!!」
ガトリングのバレルが回り始め、時間差で大量の弾丸が発射され始めた。
「くっそっ!!!」
俺はブーストジャンプを使って距離を取るが、間に合わなかった。足に何発かが当たる。感覚がわかるせいで刺激が来る。
「いった!!」
HPが一気に2割ほど減った。
きりぼし大根はそのまま乱射しながら照準を合わせてくる。
俺もヤマト程のレベルではないがライジングスキルを使って走り出す。とりあえず離れて、壁際を高速で走る。
くそ、もう完全にブチギレてて俺を弄り殺す気もないらしい。
闘技場の壁に次々と弾痕が刻まれていく。観客は大熱狂している。
ライジングスキルがそろそろ切れる。普通のスピードだといずれ避けきれなくなって負ける。こいつだけには負けたくねぇ。何かないのか、俺があいつを倒す抜け道……。素手で殴るか?でもさっきのダメージの感じ、あと数十回タコ殴りにしないと倒せない、拳用の武器も持っていない、バフをかけようにも重ねるには限界がある。重ねたところで殴る回数がちょっと減るくらいだ。この乱射の中、隙を見つけて殴るなんてそう何回もできない……。
ライジングスキルが切れた。弾丸の嵐が俺に迫る。
「耐えろよ!雷天黒斧!!」
俺は雷天黒斧の腹を盾にして走る。完全な盾じゃないせいでまともにあの弾丸を受けるとガラ空きの脚や腕に当たってHPを削られてしまう。
そうだ、どうしてあいつは俺を降参させようとした?限界時間があるから?本当にそれだけか?あいつはもう何個も攻撃無効化をしている、そしたら実はもう、限界時間が来ていて武装の効果が切れているのでは????よし、それでいこう!それでいくぞ!狙うはガトリング砲のリロードのタイミング。大型武器の戦斧を投げ捨てたせいで武器をあれ意外持っていないはずだ。
逃げ回りながら、タイミングを窺っていると、弾丸の雨が止まった!
リロードだ!
「よっしゃああ!!!!」
俺は方向転換して一気に近付く。
しかし、きりぼし大根は慌てていない。鬼の形相で俺を睨んでリロードが終わるのを待っているだけだ。
だがやってみるしかない!!
俺は雷天黒斧で斬りかかる。しかし、相手はそれをステップで避けた。やはり時間切れなのか!?
そのままステップした先に突進して胴体に雷天黒斧を叩きつけた。しかし手応えはやはりない。だが、トリガーを引く。
爆発。
どうだ!?
「ははははは!!!!バカかお前!!」
効いていない!雷属性のエフェクトが全身を走るだけだった。まじかっ!!
リロードが終わりバレルの回転が始まる。
乱射。
ブーストジャンプは辛うじてリチャージされたからそれを使って間合いを取るが、やはり何発か掠った。またHPが削られる。
走って逃げるが、ライジングスキルがまだで逃げ切れない。雷天黒斧を盾にしながら時間を稼ぐもじりじりと体力を削られていく。
あー!くそ!限界時間も来てなかったし!どういうことなんだよ!!!!じゃあなんだ?普通に降参を勧めただけ?待て待て、自分の事を策士だと思ってる奴が意味のない降参を勧めるわけない!絶対何かがある!考えろ考えろ考えろ!!!
俺は最初に雷天黒斧で攻撃した時のことを何かヒントがないかと思い出す。きりぼし大根はあの時『ユニーク武装は爆発攻撃と……』と言った。
そうだ!!!俺の雷天黒斧は爆発ダメージと量は少ないが雷属性ダメージがあったはずだ。そして、さっき攻撃した時、雷属性のエフェクトは全身を走った!!あいつに攻撃した時、無効化されたものは消えていた。ということは、雷属性は通っている!!あいつは雷属性があることを知らなかったのか。つまり、少しずつでも雷属性を撃ち込まれたくないし、あいつはこれ以上攻撃無効化を追加すると限界時間が早く来てしまうということか。
方針は決まった。
「絶対謝らせてやる……」
俺はそう気合を入れて笑った。
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