第31話
俺ときりぼし大根は控室に転送される。クソ野郎を見ると一応立っているが、まだインナーくらいしかまともに回復していない半裸状態だった。ぼーっと下を見ている
「おい」
「あ、はひ!」
きりぼし大根は腰を抜かして床に尻もちをついた。ヤマトが言っていた通りこのゲームの意識の没入度は他と比べ物にならない。こいつくらいなら感覚フィードバックの何かしらを持っているだろう。とすると、ここまで完膚なきまでに殺されてしまうと精神的にもだいぶ来るものがある。俺も串刺しにされて叩きつけられたのはトラウマとまでは言わなくとも脳裏にしっかりと焼き付いてしまった。リアルに殺される感覚はそれほど強烈だ。
「お前、謝れよ俺に」
「ごめんなさい!!」
きりぼし大根はすぐに土下座した。
「何に謝ってるかわかってんのか」
「はい、ヤマト氏にわざと負けたと言ったことに……」
身体が小刻みに震えている。誰も見ていないとはいえ、半裸の男をここまでさせるのは気が引けた。だが。
「あと、一発殴らせろ、それでヤマトにまだストーカーしてたことと、俺を通してヤマトを侮辱したことを聞かなかったことにしてやる。ただ、もうストーカーはやめろ」
「……なんでそこまで……ヤマト氏にしてやるんだ……」
きりぼし大根は頭を上げずに言う。
「俺はあの子に救われたんだ。それにお前、一緒に車に乗ってどこに行って何をしたか見たのか?」
一応ここは確認しとかないといけない。
「い、いや、無限界に入って第三圏までは追いかけたんだけど、モンスターに襲われて見失って……」
よかった。ていうかこいつのレベルで第三圏に入ると襲われてそれどころじゃなくなるんだな。
「再戦したんだよ」
「え……?」
「俺があの負け方したのが気に食わないって、本気で戦ったらほんとに嬉しそうだった。ほんとに」
「……」
「だから立て、白王、お前がそんなんだから
俺はきりぼし大根を無理矢理立たせた。
「どうする?一発殴られるか、それともヤマトに諸々チクられるか」
「……」
きりぼし大根は少し悔しそうな顔をしたが、最後にはふっと笑った。
「すまなかった……」
「いくぞ」
俺は思いっきり白王をぶん殴った。
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