第7話

 ドアを閉めて鍵をかけようとすると、ものすごい力でドアが引っ張られた。

 「うおっ」

 すると六本松はすごい速さでドアに腕を突っ込んできた。こわ!こいつ怖いよ!!しかしこうなってしまうと無理矢理ドアを閉めようものなら腕を怪我させてしまう。と、紳士的なことを考えていたら六本松はそのままドアを開き、身体をねじ込んできた。俺に身体が当たろうがお構いなしだ。ちょうど頭が目の前に来ていい香りがした。あ、いい匂い。

 「っておい!」

 「お邪魔します。あなたの部屋は?」

 そう言いながら六本松は俺の身体をすり抜けて、靴を脱いで勝手に二階へ上がっていった。

 「おい!ちょっと!!」

 急いで六本松を追いかける。見るともう二階に着こうとしていて、下から思いっきりパンツが見えた。白!そんなことはどうでもいい!急いで上がる。

 二階に着くと六本松は母の寝室のドアを開けていた。

 「おい!勝手に何してんだよ!」

 急いでドアを閉める。ドアノブを握っている手を上から握っても知ったことか!

 「んじゃこっち?」

 六本松は今度こそ俺の部屋のドアを乱暴に開ける。すると遠慮もなしにズカズカと入る。なんだこいつ!ほんとに!女の子が俺の部屋入るなんて初めてなんですけど!初めては彼女出来てドキドキしながら誘って部屋に呼んで二人っきりになっていい感じになったら親が来てあたふたすると思っていたのに!!

 ほんとにあたふたしてしまっている!

 「……」

 六本松は俺の部屋を見渡して、ある一点で止まった。そこには俺のノートPCとVRゴーグルがあった、つまりインフィニティをプレイする一式。

 「ノートPC?ニューワールドは?」

 「は?ていうかあんた誰なんだよ!」

 俺がそう言うと六本松は口を半開きにして俺を睨みつけた。可愛い!怖い!カワ怖い!新ジャンル!

 「気付かないの?」

 六本松は冷静に言った。この目……なんか見覚えがある……。可愛いと思っていたがその睨みはまさに鬼……。

 「ヤマト……?」

 半信半疑でそう言った。

 「そう、で?ニューワールドは?」

 いやいやいやいや、マジか!何で!?こんな可愛い子だったのか!?いや、偽物?というか何で家がバレてんの!?特定とかされるようなことしてないはず。

 そんなことをいろいろと考えていると、六本松は俺のノートPCをいじり始めた。

 「おいやめろって!マジで!警察呼ぶぞ!」

 俺はノートPCを急いで取り上げる。

 「あなた……もしかして、そのPCでインフィニティを……?」

 なぜか六本松は目をかっ開いて俺を見ていた。ていうか、わなわなと震えておられる。

 「そうだけどよ!!PC版だよ!なんだよ!」

 「コントローラーは!?ていうか、ゴーグルでか!えっ!?ゲームパッド!?は!?」

 もう完全にバカにされてるのがわかった。たしかにPC版のインフィニティをやっている人間は少ない、だがそれは仕方のないことだ。

 「ニューワールドは高くて買えなかったんだよ!バイトしてるわけじゃないし」

 「はぁ……だからか……」

 六本松は腰に手を置いて深く、深ーく溜息を吐いた。なんかガッカリさせたようで……すみませんね。

 それでも六本松は部屋を隅々まで見渡しやがる。今度はなんだよ……。

 「あんた無線!?」

 「いや普通無線でしょうよ。なんか問題あるのかよ。別に今まで困ったことないし」

 「信じらんない……マジ?」

 六本松は顔に手を当てて言った。そんなリアクションするのドラマくらいしか見たことなかったぞ。

 「うそ……」

 まだあるの!?何!?もうやだこの人!

 「ポケットWi-Fi……。うそでしょ!?」

 六本松さんは絶望に満ちた表情で言った。その言葉が一番しっくりくる表情だった。

 「もういい?帰ってくんない?」

 それを言うと六本松はものすごい眼光で俺を睨んだ。いや、俺何も悪いことしてないんだけど?めっちゃ怖い。

 「来て」

 「へ?」

 そう言うと手を掴まれて部屋を出る。階段を降りると母がお盆にジュースとお菓子を持っていた。

 「あれ?どっか行くと?」

 「いや、俺は――」

 そう言いかけると六本松が遮る。

 「お母さん、翔さんお借りします」

 「はいはい。気をつけて」

 おい母親!!!!!!止めろ!!!

 俺は勢いのまま外へ連れ出された。

 

 

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