第29話


珠が粉々に割れると2人を包むように舞った。


2人は軽く目を閉じ、しばらくしてから開けた。


「…どこ!?」


そこは先程までとは違うまるで宇宙。

小さな光がたくさん見える。


「記憶戻ったのかな。」


「柚茉。亞夜。起きて。」


声にびっくりして2人は目を覚ました。


そこには2つの大きな光。


それを見つめていると人型に変わり2人とそっくりな2人が現れた。


柚茉と亞夜はそれがすぐにサイナとサリナであることに気付いた。


「私達が生きていた頃の記憶を渡します。」


「貴方達が生きればいい。私達はもう覚悟が出来てる。」


「いいえ。それはなりません。天界であろうと神であろうと自然に逆らうことは誰であろうと許されないのです。」


「だけどっ。皆、2人を待ってるんだよ!?」


「ユーリやライ、シルク、レイには可哀想かもしれません。翼や兵達も同じです。ですが哀しみは乗り越えてこそ本当の哀しみと言えると思いませんか?」


「愛しい人が死ぬ哀しみなんて要らないよ!!」


「それは承知しています。ですが、我々でもどうすることも出来ません。」


「でも力があるんでしょ!?」


「私達も元は生まれ変わりです。今、生きているモノ達は全て誰かの生まれ変わりです。それが昨日今日で亡くなった。若くして亡くなった。それはその方の運命。運命をくつがえすなど誰にも出来ないのです。」


「そんなの分からないじゃない!!余命を言われた人でも長生きできる人は居る!!」


「それはごく少数にしか過ぎません。いずれは皆、死と向き合わなければなりません。それが遅いか早いかの話です。」


「私達は貴方達みたくあんな素敵な世界護れないよ。」


「翼達は好きですか?」


「当たり前だよ!!翼さんも、シルクやレイも、ユーリとライも。皆大好きだよ。関わりはまだまだ浅いけどとても大切だよ!!」


「でしたら充分です。私達にもいつも彼等が居ました。そして隣にはサリナが居てくれました。心の支えにはユーリが居ました。知っていますか?人とは独りと感じた時点で終わりです。それは誰しも言えること。ですが、本当に独りなのか隣を見ればいつも誰かが居ませんか?前を見れば追い付けと言ってる者はいませんか?少し離れたところに見守ってる者達が居ませんか?きっと誰しも居るはずです。親が居ようが居まいが関係ありません。それはその方の歴史になり、素材になり、武器になります。私とて独りであの世界を護っていたわけではありません。全ての天界人や地上人は私にとって家族でしたから。護りたい愛おしい存在でした。だから頑張れました。それだけの話です。」


「だけど…。」


「大丈夫。きっと出来ます。今まで柚茉と亞夜が頑張ってきたのも知っています。誰も頑張らない者などいないのですから。頑張っていないのなら、この世に生など受けないでしょう。」


「…。」


「私達もいつも貴方方の傍で見守ります。貴方方の中で私達は生き続けるのです。」


「大丈夫。彼等なら分かってくれます。」


「どうか見失わないで。貴方も理由があって産まれたことを。」


「貴方を愛し、慕い、護りたい者達がいることを。」


「貴方は独りじゃないことを。」


「忘れないで。死は一瞬。生は一生。必ず素敵なモノがあることを。」


2人が涙して下を向いていると、いつの間にか世界は戻っていた。




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