第26話


ユーリとライ、ナオトが天界に戻り、校長は業務に戻った。


そして2人は校舎の屋根の上。


他の者達は敷地内を飛び回ったり遊んだりしている。


「記憶が戻ると亞夜じゃなくなるのかな。」


柚茉は淋しそうにそう呟いた。


「分からない…。でも嫌なら戻さなくて良いって言ってたよ。」


「…うん。」


2人は屋根に寝転び空を見上げた。


『大丈夫?』


そこに来たのは翼。


「あっ。翼さん。」


『ごめん。2人の揺れを感じたから。』


「貴方は話せたんですね。」


『2人限定だよ。他の者達の羽根も話すことは出来るけど主の力が弱いから届かないんだ。』


「翼さんも私達が元に戻ればいいと思いますか?」


『前はそう思ってたよ。皆は早く戻して欲しいみたいだけど。』


「前は?」


『そう。前は。僕達は普段精霊の泉にいる。でも僕達は城と簡単に行き来ができたんだよ。サイナとサリナのおかげでね。でも君達が呼んでくれたから行き来が可能になった。力も凍っていた皆も帰ってきた。』


「だからいいの…?」


『そう。僕達の主は変わらない。シルクやレイも他の精霊も皆同じ。2人を慕う気持ちは変わらない。そのまま天界に戻ることもありだと思う。2人が僕達のことを忘れているのは哀しいけど、また作っていけばいい。』


「…でも天界に行けば地上に戻れないって…。」


『2人なら出来るよ。しばらくは忙しくなるだろうから無理かもしれないけど。』


「記憶を戻さないとして他の精霊の方々は納得しますか?」


ほむらとか煩いヤツは無理かもしれないけど時間はかかるよ。それを諦めるかどうか2人次第じゃない?』


2人は肩を落とした。


『君達はサイナとサリナを知らない。僕達は君達を知らない。それでも良いんじゃないかな?』


翼が行こうとすると、柚茉が引き留めた。


『何に迷ってるの?』


「皆はサイナ様とサリナ様の記憶の方がいい。私達は私達の記憶が無くなるのが怖い。」


『うん。だからそのままでいいでしょ。君達も居なくならないし、サイナとサリナのことは知っていけばいい。』


「でもね。私達は2人のこと何も知らない全く同じことが出来るとは思えないし、出来ない方が多いよ。そんな中、中身だけが違う私達に誰かは哀しくなる。淋しくなる。」


『んー。じゃあ戻せば?サイナとサリナは確かに皆の憧れ。天界に行けば分かるけど。シルクかレイに聞いてみたら?一度行きたいって。前なら2人は凍ってたから行き来も難しかったかもしれない。だけど今は居るから。』


「でも…。」


『迷惑とか考えてる?』


2人は小さく頷いた。


『何が迷惑になるの?逆にシルクとレイは特に君達が迷惑してるんじゃないかって思ってるよ。』


「…どうして?」


『当たり前でしょ。元は確かにサイナとサリナかもしれないけど今は柚茉と亞夜。1人の地上に産まれた人間だよ。前々から封じてた力を解放したら天界では最強の女王だと言われた。でも前に神に殺されてた。僕なら逃げ出してる。でも君達は逃げなかった。その理由も何も僕には分からない。けど皆はそれに甘えてるだけ。君達は君達の精一杯をしたかもしれないけど、僕達は何もしてない。』


「だとしても…。苦しむ人を見たくない。」


『だから天界に一度おいでよ。決めるのはそれからでもいい。ただ忘れないで。君達は何度生まれ変わっても僕達の主。僕達の大好きな人であることは変わりないよ。』


翼の言葉に勇気が持てたのか2人は決断した。


「精霊さん達は周りに居て欲しい。」


『当たり前じゃん。主が望むなら僕達は主のモノだよ。』


翼は精霊達を集めた。


『呼んでみて。シルクとレイの名前。2人がお願いして。』


「えっ…。」


『大丈夫。』


「…シルク。」


「…レイ。」


2人は戸惑いながらそれぞれの守護天使を呼んだ。


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