第9話
『主。どうか。
貴方の記憶を思い出して。
愛しい者達を。
愛しいすべてのモノを。
我は呼んで下されば
いつでも主の力となり。
主の愛しきモノ達を護ります。』
2人は何故か泣いていた…。
その涙は本人達にも分からなかった。
その羽根はまるですべてのモノを見透かすかのような美しさ。
そして5枚に重なった羽根の大きさは計り知れない…。
そこに居た校長と青年はすぐさま頭を下げた。
他の者達はただ呆然と、その美しい羽根に見とれていた。
羽根はしばらくすると消え、それとほぼ同時に2人は意識を失った。
その後、青年は報告のため城に帰ったようでいなかった。
2人が目を覚ますと、そこは保健室。
校長がいた。
学校に入ると身内と連絡など中々取れない。学校の敷地に入れるのも生徒や先生方と、たまに来る天界の城の関係者のみ。
なので卒業までの間は身内の変わりに先生や校長が親代わりとなる。
「…校長…?」
2人の意識はハッキリしていた。
「大丈夫か?」
「…すいません。途中から記憶があまりなくて。」
「…羽根を出したのは覚えてる?」
「…はい。あの人は!?」
「今日は帰ったよ。」
「やっぱり城行きですか…?」
校長は少しためらいながらも口を開いた。
「君達の羽根では無理に城に連れては行けないんだ。」
2人はその言葉に安心する反面、違和感があった…。
「どういう意味ですか?」
校長は黙り込んでしまった…。
「校長!!」
「…すまない。僕からは中途半端なことは言えないんだ。
「亞夜!!私勉強してないから分からないの!!教えて!!」
柚茉は泣きそうになりながら亞夜に言った。
「…ごめん。私にも分からない…。」
「…校長。予想でも言えないんですか?」
「…すまない。」
柚茉と亞夜は大きく肩を落とした。
「何で…。ただ自分の記憶が欲しいだけなのに…。校長。」
「何かな?」
「答えられたら…知ってたら教えて下さい。羽根を解放する時、声が聞こえるモノですか?」
2人は羽根の手入れの授業もあるが、常にサボり追いかけをしていたので学校に来てからは一度も出していない。
学校に入るまでに何度か出したことはあったが、今回のようなことは初めてだった。
「声?」
「柚茉も…?」
「亞夜も聞こえた…?」
「うん。」
亞夜に関してはちゃんとした記憶があり、力もいたって普通。訓練して高めたモノなので他の子達と何ら変わりはない。
「ごめん。僕の知識にはない。」
「…そうですか。」
「あっ。」
「亞夜?」
「校長。題名のない本て特別図書に置いてますか?」
「題名のない本…?ないはずだよ。」
「持ち出しは出来ませんよね…?」
「…君達なら出来るかもしれない。僕では力添えにすらならないから何か起きた時の対応が出来ないんだ。明日、聞いてみてくれるかな?」
「…はい。」
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