第8話


2人は他の生徒と違い呆然とするより、驚きで開いた口が塞がらない。


青年は勝ち誇ったように立っている。


「おい。そこの2人。」


青年は反応が違う2人を見逃さなかった。

いや、逆に2人だけが違ったので目立った…。


「羽根を出してみろ。見てやる。」


「お忙しいでしょう。」


青年が柚茉達をさしたので校長は慌てて庇っているが、お構いなしとでも言わんばかりに2人に近付いた。


2人は顔を見合わせ仕方なく立ち上がった。


羽根の大きさや美しさを調整するのは不可能。

出来たとしても力がある者の傍で出せば反応して本当の羽根が出ることの方が多い。


2人はそれを知っていた…。


「あの…。私たちの羽根などお見せできるほどのモノではありません。」


「それは俺が決める。」


2人は仕方なく覚悟を決め、深呼吸した。


“良いこと思いついた!!”


そう脳内通信テレパスしたのは柚茉。

その直後、なぜか先生が倒れた。


脳内通信テレパスは力が強い者が弱い者に強い念を送ると気絶することがある。


“柚茉!?”


“ごめん。でも…行きたくない。”


倒れた先生に驚き、皆が駆け寄る。

もちろん青年も見に行った。


「…強い念を受けただけだ。問題ない。」


残念ながら見破られた。


魔力が強い者は大抵、相手に触れると傷や痛みの原因が分かるとされている…。


青年は先生の頭に軽く手をかざした。


「…あれ?」


先生は何事もなかったように起きてしまった…。


“こんなことも出来るの!?”


“バカ…。”


柚茉は大きなため息をつき、少しの間考えると覚悟を決めたのか、まっすぐ青年を見た。


「よろしくお願いします。」


亞夜は柚茉の覚悟に気付き、同じように頭を下げた。


「よし。」


羽根だけはどれだけ高等魔法が使えても超上級であろうとも関係なく、呼ばないと出てこない。

2人は念じて、その名を呼んだ。


「「羽根フィーア」」


それはなんともか細い声で。

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