第11話



 制御室のやり取りを頭の隅で聞きながら、恭祐は目の前の三台の動きをじっと観察していた。


 無機質な金属が剥き出しの、人型駆動傀儡、教習機。

 人間の形に模したその姿は、立ち上がってその場にいるだけで大きな存在感を放つ。そして意思が感じられない空虚な動き。先ほどまで見知った人間がリンクしていた筐体が、突然不気味な塊に豹変する。

 広い訓練場の中にたった一人で正体不明の三台と向かい合う潜在的な恐怖心に、闘争本能が熱く昂る。


 腰を落としたまま、拳の握り具合、足先の力の入り具合を確認する。

 ……状態はまずまずだ。

 ノンチューンの教習機ならば妥当なレスポンス。

 それに相手も同じ教習機。


「ハードの差で勝敗が付くことはない……ってことだな」


 教習機に口腔は実装されていないが、思わず舌なめずりをしそうなテンションを自覚する。

 リンク中の自己分析は、恭祐にとって大事なポイントのひとつ。

 戦闘スタイルは本能のままに、だがそんな自分を俯瞰して客観視することが、筐体のより良い動きに繋がると知っている。


『やっぱりネットワークからの強制切断もコマンド拒否だな……』


 律の冷静な声が耳に心地いい。

 筐体を通して人とコミュニケーションを取ると、筐体にとって相性のいい人間が良く分かる。


『恭祐、まずは手前の筐体で身体を慣らせ』


 そしてヒナの声は筐体の聴覚によく馴染む。

 対面していた時の、感情の抑揚の無さが全く感じられない程、今は闘争する強い意志を感じる声音だ。


「あいあいヒナちゃん」


 軽い返事をして、指示された教習機に狙いを定める。

 その筐体は、恭祐自身も狙いを付けていたものだ。外側から見ていても、この教習機だけはリンクの同調率がかなり低そうだ。疑似リンクのための動作パターンが何かに拒絶されているのか、残り二台が暫くして直立静止したのに対して、こいつだけはいつまでもガクガクと意味の無い動きを続けている。


 まずは手始めに反撃される心配の少ないこいつで、教習機の運動性能とパワーの限界を知らなければならない。


 動きのパターンを頭に刻んで、先回りして懐に入り込む。

 そして回し蹴りの要領で、回転しながら右手を振りかざし、左脇腹のバッテリーケーブルを狙う。

 ここで足を使わないのは、万一破損した場合に備えてだ。片足を失っては運動性能が格段に落ちるが、最悪両手が無くなっても対抗することは出来る。


 ガツ……ン!


 金属のぶつかり合う音と何かが引き千切れる音が響き、それと同時に狙った教習機が無抵抗に後方へと転がっていく。

 軽く火花を出しながら数メートル地面を滑った筐体。

 全く力の入ってない四肢は、殴り飛ばされた衝撃のままに投げ出されている。


 右手には確実にケーブルを捉えた感覚があったが、結果はどうか。


『一台、シグナルロストですわ』

「っし!」


 奈央が静かに告げる声に思わずガッツポーズを取りそうになるが、決して気を抜くことなく残り二台を視界に収めながら間合いを取る。

 倒れた一台に対して反応することなく、まだ静止し続ける二台。


 どちらから近づくかを考えながら右手の状態を確認する。

 先程の衝撃で、中指が突き指の様にジンジン痺れているのだ。拳を作る動きに問題は無いのだが違和感が強い。


『右手中指ダメージレベル2です。感覚伝達部分にロストが拡大、セーフティーモードに移行します』


 中指の状態を奈央が読み上げる。

 するとすかさずヒナと律が反応した。


『律、恭祐へ疑似神経の応答を返せるか?』

『教習機にそんな機能はありません。その代わり恭祐の命令パターンに合わせてパラメータを調整する』

『じゃあ恭祐、なるべく右手を意識しながら中指については自己補正で。その方が筐体の反応がスムーズだ』


「りょーかい。今のところ問題なさそう」


『律、恭祐の同調特性から考えたら速度重視の方がいい。反射のレスポンスも一段階上げて欲しい』

『うーん。短期的なオーバークロックは教習機では出来ないしなぁ。指先とかの細かい感覚同調を切って、アクセラレータを動かすか……』

『それでいこう。恭祐、拳は固めたままになるが、その分駆動系の処理速度が上がるから、動きやすくなると思う』

『修正パッチOK、転送完了。変更反映まであと五秒……三、二、一……。切り替え確認完了。恭祐、チェック』


 律のカウントダウンと共にフッと身体の感覚が変わる。

 一瞬の虚脱感ののち、目の覚めるようなクリアな体感。

 目の前の二台から注意を逸らさないまま、全身のレスポンスを確認する。


「想像以上だわ。こっちの方が動きやすいぜ。さっすが」


 先程よりも自分の感覚に適した速度で反応が返ってくる。時間をかけて自分に最適化したように、打てば響くような状態だ。


 何も言わなくても次から次へとバックアップがとんでくる心強さ。自分は目の前の敵にだけ集中していればいいということが有り難い。


 これだけのサポートがどれほど特別なのかということは、言われずとも分かっている。律もヒナも、決して無名な学生レベルではない。

 たった一度の打撃だけで正確に恭祐の感覚を言い当て、的確に要求するヒナ。そしてそれを瞬時にハードに反映できる律。

 この場慣れした対応力は相当の実戦経験を積まないと不可能なのではないだろうか。


『……ネットワーク上の挙動が変わってきているな……。恭祐、相手が何か始める前にカタをつけてくれ』

「オッケーりっちゃん」


 呟くように律に返事をしながら地面を蹴る。脚部のバネが恭祐の命令通り強く作動し、肉体での全力の初速より倍以上速く、周囲の景色が過ぎていく。


 言われた通り、右手は拳の状態のまま固定し、指先までの感覚は完全に無視して大きく振り上げる。


 そのまま直線的に、動きの無い一台の左脇腹を狙った――。


『弾かれた!?』

「うっそだろっ……!」


 攻撃をダイレクトに跳ね返されて思わず悪態が漏れる。

 狙いを定めた一台が、突如防御体勢を取ったのだ。


 弾かれた衝撃を利用して一回転してから着地し、瞬時に振り返って再び飛びかかる。


 しかしそれも叩き落とす様にかわされ、ムキになって追いかける。


 蹴り付ければいなされ、殴り掛かればガードされ。肉体を超えたスピードでの攻防が続く。


 ――面白い。


 久々の戦闘にテンションが昂る。

 流れるような応酬に、腕が鳴る。


『自動回避ルーチンか?』

『それにしては確度が高すぎる』


 制御室の会話を聞きながら、夢中になりすぎていた。


 だから、判断が遅れた。


 ガキィィン……!


「…………っ!」


 金属がぶつかる激しい音と、相応の衝撃。


『右腕破損!』

『ダメージレベル4、感覚遮断処理入ります!』

「ぐ……っ!」


 制御室の悲鳴のような声と共に、全身に衝撃が走って息が詰まる。


 突如、視界の端からもう一台の筐体が攻撃を仕掛けてきたのだ。

 瞬時に身体を引いて直撃は免れたが、無意識に出した右手が持っていかれた。


『右肘以下の命令系統を全てスキップ!』

『恭祐回避だ! 一旦下がって!』


 飛んでくる指示に脊椎反射で従っているが、受けた痛みの大きさで頭は真っ白だ。


 いや、痛いと言っても、実際はそんな信号がレスポンスされているだけで、肉体には何のダメージも無い。

 それがわかっていても、一瞬冷静になれない程の激痛が脳天を直撃した。

 しかしそれだって一瞬。

 すぐにリンカーの受容できる大きさを超えていると判断した筐体プログラムが、要因箇所の感覚を切断する。


『排熱チェック忘れずに! ……恭祐、大丈夫か?』


 しかし一度味わった衝撃が直ぐに消え去るものではない。

 存在しない痛みの余韻に耐えながら、突然動き出したもう一台も含めて、二台と対峙する。


「ったー……くっそ……」

『待ってください、二台に対する外部アクセスが急激に増えていますわ!』

『まさか、この状況でリンクする気か……?』


 律の愕然とした声を耳元で聞きながら、体勢を整える。


 目の前には若干腰を落とした敵の二台。

 その姿勢は、いつでも動き出せるということだ。


『恭祐、くるぞ』


 冷淡なヒナの言葉に重なる様に、突如、二台は筐体特有の、人体を超えた加速で動き出した。


 左右から同時に迫ってくる教習機を数瞬、観察する。

 そして既に何回か交えて若干破損している方に目標を絞ると、一歩後方に飛び退り、固めた右手に意識を集中しながら相手に向かって走り出した。


 右手は使えない。

 だがここに右腕という金属の塊がある。


 この速度でお互いが衝突すれば、恐らく数十トン以上の衝撃が加わるだろう。自由に動かせなくてもこの状況では全く問題ない。全てのコントロールを放棄した後だからこそ、相手のバッテリーを破壊する『鈍器』になる。


「……っく……!」


 衝突直前に一瞬のフェイントを入れ、低い体勢から右腕を突っ込む。

 感覚はないが、激しい衝撃が肩に加わり正確に相手の懐を捉えたことを察する。


 ――しかし。


「…………!?」


 受けた衝撃で弾かれる筈の腕が、動かない。


 右腕を固定するように掴まれてしまったのだ。

 パワーバランスで相手を押しやってはいるが、両足でしっかりと踏み堪えられている。


『恭祐!』


 ハッと気付いた時には遅かった。

 直ぐ真横に、一台の教習機が迫っていたのだ。


 ガツンッ……と激しい衝突音と共に脳がぶれるような揺れ。

 腕をロックされたことに気を取られた一瞬の隙に、もう一台が恭祐の右肩のジョイント部分を狙ったのだ。


 まるでスローモーションのように自身の筐体が吹き飛ばされたことを、俯瞰するように冷静な頭が認識した。


 衝撃に体勢が崩れ、そのまま回転するように大きく宙を舞っている。

 もうすぐ無様に地面に叩き付けられるだろう。

 ――ここから脚部を下にして着地する余裕は、無い。


 瞬きの間に色んな思考が頭を巡る。

 地面に落下する衝撃はどのくらいだろう、そのダメージは運動性能に影響は及ぼさないだろうか。そういえば、相手は、今?


 キュルリ、と眼窩に埋め込まれたレンズが、攻撃した体勢のままの二台の教習機を捉える。


 片方は大きく腰を落として左腕を突き出し、そしてもう片方は、恭祐の攻撃から耐える様に両足を広げて踏ん張っていた。


 恭祐が狙いを定めていた、相手筐体の左脇腹の電源付近には、『何か』をしっかりと抱える、相手筐体の両手――。


「ぐっ……ぁぁああああっ!」


 ソレは、俺の右腕だ。


 相手がしっかりと抱え込んでいる金属の塊。

 引き千切れたコードが垂れ下がり、フレームの曲がった、右腕。


 認識したとたんに感覚の無い右側から、気持ち悪い程の痛覚が押し寄せる。

 と、同時に、激しく地面に叩き付けられた。


『右腕分離、全身の感覚神経がセーフティーモードに強制切り替えです!』

『落下ダメージは?』

『コアシステム異常なし、両脚部OK、左腕は着地の衝撃で手首部分にエラーがありますっ』

『一条、右腕側のフィードバックは全部遮断してあるんだろうな? 全て肉体で受信したら一発で失神するぞ』

『勿論切ってるよ。ヒナ!』

『バイタルは少し乱れたが大事ない。リンクも切れてないし、耐えたようだな。……それともヤラれ慣れてるのか……』


「……っく……ヒナちゃん、酷過ぎ……」


 痛みと全身に加わる衝撃。

 それらが一瞬で肉体にフィードバックされ、上限を超えた信号がプログラムによってカットされる。

 息も詰まる様な痛みは一瞬で、後はただ、麻痺したような五感と、何も感じない右腕側の気味の悪い喪失感だけ。


 自分の身体じゃないことは理解しているのに、切断された部位を、傷口を隠す様に残された左手で押さえ込んでしまう。

 そして、そこにあるはずの腕が無い事を再確認し、肉体との齟齬に耐える。


 耳元で聞こえる制御室の落ち着いた会話が、恐慌しそうな気持ちを沈め、冷静さを呼び戻した。

 ヒナの言葉に返しながら、倒れ込んだ筐体をゆっくりと立ち上げる。


「セーフティ入った感覚、マジ気持ち悪ぃわ……。悪いけどこれ通常モードに戻してくんね」


 久しぶりの戦闘によるダメージで、震えそうになる声を無理やり押し殺す。


『それは無茶だ、牧さん。これだけのパルスを受信するなんて……』

「大丈夫。一回受け止めた後だから、もう心構え出来てるし。それに……このままじゃ、次は左腕イかれるっしょ」


 浮遊するような、鈍い同調率。

 全身を局所麻酔したように感覚が無い状態で、これまでの経験だけでかろうじて筐体を動かしている。このままでは、確実にジリ貧だ。


 目の前では、戦闘態勢のまま静止していた二台がゆっくりと直立の姿勢に戻っている。

 片方は恭祐との相対でいくらかダメージを受けているようだが、もう一台は未だ完全なままだ。どうにか一台を仕留められたとしても、残る一台まで確実に倒せるビジョンが見えない。


 ならばせめて、幾らかでも勝機の見出せる、これまで通りの通常モードのリンクで闘いたい。

 痛みを逃がしながらの戦闘になるが、麻痺したような状態より数倍は動けるだろう。


『……バイタル次第。心拍が基準を超えたり、脳波に乱れが出たらすぐに強制遮断する。……それで行こう』

「サンキューりっちゃん!」

『一条!?』

『リンク中は、リンカーの指示が最優先される。リンカーが一番動きやすいように整えるのが俺たちの仕事だよ』

『いや、だが……』


 言いよどむ御子柴の懸念は十分に理解できる。

 筐体闘技の規定では、腕が喪失する程のダメージではセーフティーモードで凌ぐことを推奨している。肉体側に負荷がかかりすぎて、リンカーが回復不能なダメージを受ける可能性があるからだ。

 それは、十全にわかっている。

 実業団レベルでも、この状況で全ての通常レスポンスを受け取ることなど稀だろう。筐体闘技では破損も見越して、各部位の疑似応答を返すようなチューンがされているからだ。

 だが、これは教習機。そんな高等な機能は備わっていない。


 でも、それでもやる。

 俺は、やれる筈だ。

 そうじゃないと、ここに立つ意味が無い。


『恭祐ならば大丈夫だろう。何といっても最初の分離時にリンクが切れなかったんだ。一般的なリンカーならば無意識下にログオフしてるか、失神して強制遮断されているところだぞ』


 筐体越しでは、まるでフフンと鼻を鳴らしそうなヒナの援護射撃。

 それに追従するように律がプログラムの動作修正を始めたようだ。


『でも牧さん、無理なさらないでくださいね』

「あいよ、奈央ちゃん」


 奈央の心配そうな声に軽い返事をしながら、目の前の二台からじりじりと遠ざかる。

 さすがにこの状況で二台同時に相手をするのは無謀だ。


 相手の思惑は不明だが、これだけのダメージを与えておいて、追撃も撤退も何のアクションも起こしてこない。ならばこの時間的猶予を有効に活用しよう。


 呼吸を落ち着け、想定される痛みに備える。そして頭の中で二台と相対する何通りかのシミュレーションを行った。


 ……しかし。

 通常モードで動けたとしても、片腕が無い状況でこの二台を確実に仕留められる道筋が描けない。思考も欲望も感じられない相手に対して、どう動けば効果的なのかがわからない。


 やっぱり本格的にマズイよなぁ……と内心弱腰になりかけた、時。


『しかし……律。これでセーフティを抑止したとしても、こちらが不利な状況に変わりはないぞ。いくら恭祐のリンクスキルが高く、上手く立ち回れたとしても相打ち……悪くすれば一台は確実に残ってしまう』


 冷静に状況を分析しているヒナまでもが、同じ結論に達したようだ。


「だよねぇ。ここで俺が動作不能になったら、あの二台はここから出ちゃうかもしんねーんだもんなぁ……。いっそ宮坂講師とか……整備室にいる皆を呼んで来たら何とかなる?」

『宮坂はハード専門だ。講師と言えど専門外のリンクなんて木偶の棒もいいところだろう。……そこで役に立つのが一人いる』


 ニヤリ、と擬音が聞こえてきそうなヒナの発言に虚を突かれる。

 せめてあと一人でも味方がいれば、立ち回りが楽になることは確実だ。願ってもいないのだが……。

 え、誰かいた? と聞き返そうと思った矢先、耳元のスピーカーで、誰かの歩く小さな足音が聞こえた。


『さぁ、律はさっさと用意しろ。修正パッチぐらい御子柴でも適用できる』

『……え? え、何?』


 ポン、と恐らく律の肩を叩いたのだろう音と、戸惑う声。


『確実に勝てない勝負は博打だ。今は博打を打っていい状況では無いだろう。片腕のない恭祐が不利なら、もう一台を出して数的不利を脱却すればいい』

『いや、それはその通りだけど……』

『ほら、律、屁理屈を考える前にさっさとリンクの準備をしろ。御子柴はこのまま律を引き継いで恭祐の対応、奈央とヒナで律の筐体をスタンバイさせるぞ』


「え、りっちゃん!?」


『ちょっとヒナ、俺リンクは……!』

『さっきまで依舞樹が組んでた教習機がちょうど余ってるだろう、アレを使おう。依舞樹は整備室に戻ってるな? 直ぐに内線で指示を出せ』


 おいおい、それは余ってるとは言わない。俺たちのグループの単位がかかってるんですけど。

 ……なんてツッコミをする勇気はない。

 そもそも俺が不甲斐ないからこんな切羽詰まった状況になってしまったわけなので、もし律が少しでもリンク出来るのならば是が非でも助けて頂きたい。


『ヒナ! だから俺は、リンクはしないって!』

『ATRAの威信がかかっている重大事案だぞ。私達の見ている目の前で、手をこまねいたままデータを盗ませる気か?』


 睨み合っているのだろうか、スピーカー越しに緊張した空気が伝わってくる。

 だがここはあえて空気を読まない。


「えーっと、りっちゃんさんや」

『……なに』

「少しでもリンク出来るなら助けてほしいなー……なんて」

『…………』


 あぁ、すっげぇ渋い顔してるんだろうなぁ、という間。

 しかしその裏では、残りのメンバーが躊躇いながらもヒナの指示で作業を進めている声が聞こえる。ここまでくればもう、リンクするしかないというお膳立てされた状況だ。


 律もそれがわかっているのだろう、何か言いたそうに小さな声を漏らした後、大きく溜息を吐いた。


『……言っとくけど、期待するなよ……』

「しないしない! いや、しないって言い方変だけどさ、相手の意識が二つに割れるだけでも、戦い方が変わるし、勝機が上がるんだって!」

『それは良くわかるよ……。……ヒナ!』

『スタンバイ完了。さっさとリンクスペースへ入れ。恭祐も、御子柴がパッチを上げるから直ぐに準備を』

「オッケー、ヒナちゃん」


『じゃあ恭祐、後で』


 躊躇いがちな苦笑をはらんだ律の声は、しかし、苦手なものに対する緊張感は無かった。


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