第2ー1話
時計の短針が、九時を指した。
明海はそれを視野の端で捉えながら、テレビのリモコンをつけた。
(遅い…)
既に雪は降り始め、通りを歩く人影もまばらになってきている。優斗はいったい、こんな時間まで何をしているのだろう。
どっと、テレビから笑い声が流れた。明海は懸命にその内容を頭に入れようとしたが、どうしても落ち着いていられない。はぁ、と一つ溜息を落とし椅子から立ち上がる。
とにかく、学校に連絡してみよう。テレビを消し、半ば使命感のように感じながら、明海は受話器を取った。手にとって、ふと留守電が入っていることに気づく。おそらく、明海が仕事に出かけている間にかかってきたのだろう。再生すると、若い男の声が聞こえてきた。
「もしもし、私蔦木くんの担任をしております、高橋というものです。この度は欠席の旨が伝えられていなかったため、お電話させていただきました。また時間を空けて伺います」
電話が途切れ、機械音がリビングに響いた。明海はそれを身動きすらできずに聞いていたが、やがて力尽きたようにへたり込んでしまった。
(どうしよう…)
警察に伝えるべきか、明海は躊躇った。
優斗が学校に登校していないということは、丸半日行方が知れていないのと同義だ。今から連絡しても、もはや遅すぎるのではないだろうか。
明海の困惑を余所に、時間は刻々と進んでいる。こうしている間にも、優斗の身に危険が迫っているかもしれない。いずれにしても、すぐに行動を起こさねば、最悪の事態になりかねないのだ。
明海は誰に対してか頷くと、立ち上がった。
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