テレビ

 テレビが流行りだした。とりわけ最近は人形劇が人気だ。少し前まで人々はそれに見向きもせずに最新の技術が搭載されたシミュレーションゲームに夢中だったが、とある研究所がスポンサーになり宣伝したおかげで火が着いた。


 先日新たにアンケート機能が実装された。視聴者による多数決で劇を途中から変えることが出来るというものである。少数派意見は採用されないがそれでも、忽ち視聴者は魅了された。


 自分が望んだエンディングに喜ぶ者、マイノリティとなり泣く者、投票せずにただ眺める者。様々な消費者が多数決によって創られた物語を観てきた。クレームにより少数派が採用される劇も出始め、人々はより一層それに熱中した。


 製作時から既に取り付けられていた、テレビから送られるカメラの映像を研究所の所長が眺めていた。人々のリアクションを眺める事が彼の娯楽である。「エンディングは1つでもこうすれば更に視聴率が上がるから面白い。」にこやかに彼はそう呟き、そして今日も明日も劇は熱狂的なファンを増やし続ける。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る