何かの種がそこにあり、少年が一人それを見つけ、花をみたいが故に植えた。やがてそれは蔦が絡む美しい何かに成長し、少年も好きはじめてきた。花は咲かなかったが、好いてしまったものは仕方ないと、愛着が故に少年はそれを育て続けた。花束を持った他所の人が家の前を通る度に彼は蔦を悲しそうに眺めていた。


 そんな小説を執筆しながら青年は、自分のような過ちを他人に繰り返して欲しくないと願う。しかしその小説は忽ち有名になり、真似をする者が後を絶たなくなってしまった。こんなハズではなかったと嘆く彼の背中を母親が優しくさする。彼女が悲哀と愛情を持った目を軽く伏せながら笑ったことを彼は知らない。

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