ぬん!

 異世界転生しても日本語が使えるのはおかしい。かといって全く知らない言語でもそれはそれで困る。とある人工言語を使ったガチ異世界転生物語を読みながら思った。寝て起きても、怪しい本を開いても、井戸に飛び込んでも、異世界には行けない。そもそもそんなファンタジーなんて今時有り得ない。だから今日もラノベを馬鹿にしながら読み歩きをした。


 醤油と豚骨を混ぜ合わせたようなラーメンの香りに吸い寄せられた。いつの間にかいつもの散歩道に屋台があった。1つ頼む。とろけるような大きな豚肉の塊が堪らない。熱い、地味に麺の量が多い、そして美味い。食べ終わり箸を置いた時、僕は知らない世界に飛ばされた。


 幸いにも日本語が通じる。しかも嬉しいことにお金も変わらないようだ。だが会計時に気付いてしまった、“ラーヌン”と書かれている。地味。それなら“ごめん”も“ごぬん”になるのかと思って店を出るときに言ってみたら店員に変な顔された。店を出るときで良かった。折角だから散歩を続けた。


 思いっきり知っている街だ、それはそう。こういう時はでかい店入ればなんとかなるって本で読んだから百貨店に向かった。殆ど何も変わらない、強いて言うなら夏なのにヨッ○モッ○のチョコが外側についている、これも地味。横のブースの店員の田中の名札、“ABURAMUSHI”と漢字の上に載っていた。地味に頭おかしい、いや地味じゃないかこれは。ところで飽きたからそろそろ帰りたい。


 ラーメン食えば帰れそうな気がしたが、流石に連続で食うのはくどい。吐くのも違う気がする。考えても思い付かなかったから仕方なく先程の店にあった別のメニューを頼んだ。油そび。汁がない分ヘルシーだというのは嘘っぽいが、氷水飲んでおけば熱量が相殺されると僕は信じている。途中で飽きたから置いてあった酢をかけ回した。これも美味い。食べ終わり箸を置くと、案の定元の世界に戻れた。満腹で吐きそう。あと、油そばなのねこれ。

 剣道の“メーン”が“ぬーん”になるのかを知れなかったことだけが残念だった。

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