第2話 上司と部下は、幼馴染。 前篇

「はぁーーーーーーー…」


初出社、出遅れました。

電車が人身事故で止まるとか、シャレになりません。

でも、ご冥福をお祈りしておこう。 

南無南無なむなむ


「あーくっそ…大事な会議だってのに…会社に連絡とるか…」


なにやら、同じように出勤?の人がつかまっているようだ。

私も連絡しなくては。新人が初日に遅刻は、さすがにクビかもしれない。携帯…


「…もしもし、財宮たからのみや株式会社常務じょうむ 鞠谷まりや聖冴せいごです。

はい、はい。トラブルに巻き込まれまして…はい?…はい。…分かりました。

では、直接で。はい、早急に向かわせていただきます。失礼いたします」


------この人、同じ会社だ。しかも常務で、もう勤務はじめてた…。


感ずかれたら、絶対クビコース。下向いてやり過ごそう。


「おい、そこで下向いてる女」

「?!!?!!」


思わず肩をビクつかせてしまった。


「財宮の社員証ちらつかせながら、気づかれないとおもってんの?顔あげろ」

(社員証のばかあぁぁぁぁぁぁ!)

「…はい」


-----うわ。いい顔立ちしてる。スーツに眼鏡最高。(眼鏡フェチ)

でも、どっかで…?


「っ…ここじゃ説明が面倒だ、つらかせ。電車おりるぞ。車内で話す」

「あ…えっ?…はい!」


ずかずかと地上への階段へと歩く常務の後ろを、わけもわからず追いかけている間、急に話しかけられた。


「お前、名前は」  

上野かみのあやです」

「…ふーん。じゃあ上野、これから行く場所にお前は秘書としてついてこい」

「…はぁ?」


なにをいっているんだろう。常務は。


「一度会社に戻ってから、秘書を連れて取引先に行こうと思っていたんだ。

だが、電車はあの様子。会社に戻ってると、取引先との時間が間に合わない」

「あの…秘書さんとなら、取引先で合流すればよいのでは…?」

「…その秘書も、病欠だそうだ。さっきの連絡で知らされた。はぁ…」

「………。」


なんだろう。とことんついていないのだろうか。

もしや、秘書の代わりをやって許してもらえとか、神様のお告げだろうか。


「どうだ?」

「…やります。ただ、右も左もわからないので隣でうなずくくらいしか」

「うーん…よし。に着いたら俺の指示に従え。悪いようにはしない」

「はい、わかりました。精一杯頑張ります。悪くなったら、私の演技力不足です」

「いい返事。よしいこう」


話がまとまったタイミングで階段をあがりきり、すでに待っていたタクシーに二人で乗り込んだ。


『どうか、うまくいきますように』

お互いに、祈りながら取引先に向かうのだった。













  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る