うさぎ ー約束の指輪ー
マキガミ
第1話 記憶の欠片
------ジリりりりりりりりりりりりりり
『おはよう。起きて。起きないと…襲っちゃうぞ』
ばしっ
「…はぁ、おはよう。イケボめざまし…声に変な低音入るようになったね」
10年前の少女漫画の応募者全員サービス。声優さんの声入りめざまし。
年季が入り、さすがに音声に不調が出てきていて、こわい。
「もう、君とはおさらばすることにしよう」
電池を抜いてタンスの上に置き、朝の支度を整え始める。
今日は就職決定後、初出社の日。遅刻は許されない。
簡単に朝ご飯をすませ、身支度を整えて、持ち物の最終確認をしていた。
そのときだった。
大切に使っている財布から、コロンとうさぎモチーフの指輪が、目の前に落ちてきた。
-------「約束だよ。わすれないでね」
十数年前の、子供同士のかわいい約束。
一番純粋で、綺麗な記憶。
「残念なことに、誰と約束したのか覚えてないんだよなあ」
思い出しかけた記憶の欠片を棚に置き、仕事に出かけたのだった。
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