番外編

白石さんの高校生活

「白石さんの高校生活って結局姉さんとのことしか聞いて無いですよね」

僕はふと思い出し白石さんに聞いてみた。

「そうだね。でも他に私に思い出なんて・・・」

(あれ?もしかして地雷踏んじゃったかな)

白石さんの事だから下手すると友達が姉さん以外いなかったのかもしれない。

「そんなに聞きたいなら教えてあげるよ」

「姉さん!?どうしてここに?」

いつの間にか家に姉さんが侵入していた。

「ミキ・・・合鍵勝手に作らないでよ」

「ごめんね」

軽く流しているが立派な犯罪である。

「それでアキ、高校の時の話が聞きたいなら話してあげる。そうねぇ・・・あれは高一の体育祭だったかしら。まだあの頃はツンツンしてたからなぁ」

「あっ!その話だけはダメェ!」

もちろん姉さんに容赦なんてない


「体育祭?あんまり興味無いかな・・・」

「えー!せっかく足速いのに勿体ない」

高校一年の体育祭。学校全体が活気づいていたが、私にとっては心底興味がなかった。

「という訳で、種目決めまーす!」

ミキはこういう行事ごとが好きで率先してみんなを引っ張っている。

「後は、混合リレーの女子だけだね。誰か個人種目入ってない人で!」

「個人種目に入ってない女子は、白石さんだけだね」

「そう。白石さんやってくれるよね?」

「ちょっミキ、私個人種目はやらないって」

「やってくれるよね」

そのまま私はミキの圧力に押された形でリレーに入れられた。

(はぁ、めんどくさい)


「ちょっとー白石さん?リレーの練習して下さる?」

私が校庭の隅でみんなの練習風景を見ているとミキが声をかけてきた。

「私は参加するって言っただけで練習もするなんて言ってないから」

「相変わらずだね。でも今年は2組が速いから難しいかも」

「へー」

どうでもいい

「まあいいや、練習したくなったら来なよ」

そう言ってミキは校庭に戻った。

(・・・帰ろ)


そして体育祭当日

「よっしゃー!みんな頑張るぞ!」

「「「おおーー!!」」」

ミキを中心に1組は一致団結し着実に点数を稼いでいった。

「点数は同じくらいだね」

「そうね。後は私たちのリレーだけだから実質的にリレーで勝った方の勝ちね」

「頑張りなさいよ・・・って言っても無駄でしょうけど」

「やれるだけはやるつもりよ」

「絶対手を抜くなぁこいつ」


・・・最後の競技は1年生の混合リレーです

私たちは決められた順番で入場し、そのままスタート位置についた。

(どうして私がアンカーなのかしら?)

おそらくバトンパスが少ないから、と理由で解釈しスタートを待った。

「よーい・・・」

バンッ!

(意外とうちのクラスが頑張っているわね)

幸先よく1組がトップを走り、バトンが渡るごとに差は広がっていく。

(これなら手を抜いても大丈夫そうね)

そんなゲスな考えが頭によぎった時だった。

ドンッ!

「あーっと!ここで1組が転倒です!」

私の前の走者だった。バトンを貰ったタイミングでつまづいてしまったのだ。

そしてそのまま後ろについていた2組が追い越し、差を広げていく。

(あの2組のやつ、転ばせやがった)

他の人からは見にくいように、おそらく最初から狙っていたのだろう。

「ごめんなさい白石さん。私のせいで・・・」

クラスメイトが涙で顔をぐしゃぐしゃにしながらバトンを渡してきた。

(あんなに頑張ってたもんね)

「大丈夫」

「え?」

私はバトンを受け取ると、普段の体育でも出さないスピードで駆け抜けた。

トップとの差は30m以上はあったがそんなことはお構い無しだった。

「はっ、速い!1組のアンカーが速いです!」

そのまま私は駆け抜け1着でゴールした。

(柄にもないことしちゃった)

「白石ざぁぁぁん!!」

私にバトンを渡してきた子が私に飛びついてきた。

「ありがとうー!白石さんのおかげだよ」

私はその子を軽くなだめると一言だけ言った。

「いいえ、みんなの努力よ。私は転んだ分を取り返しただけだもの」

私はそう言ってその場を立ち去った。


「優勝は・・・1組!」

1組の全員が立ち上がって喜んだ。

「ありがとう白石さん!あなたの走りのおかげよ」

「最後速かったね!陸上来ない?」

先輩たちまでも私を取り囲んで喜んでいた。

「えっと・・・先輩たちの応援あってですよ!」

私が先輩を持ち上げるように笑顔で言った。

「「「うぉぉぉぉぉ!!!」」」

大地が揺れ、表彰式どころではなくなった。


「そしてその日から神格化され女神とされることはまた別の話」

「なんか・・・凄いですね」

「もぉぉぉぉ!何であんなにこっ恥ずかしいこと言ったのよ、私!」

「それじゃあ次は修学旅行編で・・・」

「もうやめてぇぇぇぇ!!」



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たとえ愛が無くたって 安里 新奈 @Wassy2003721

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