第14話

「だから、私の居場所を作ってくれたアキのことが好きになったんです」

「まあまあいい話だったけど、結局は雲雀ちゃんがどうしたいかだよ」

私はそんな真剣な話を聞いて、つい柄でもないことを言ってしまった。

「どうしたらいいかでもよく分かんなくて・・・」

これを聞いて私は、あいつがどうしてアキを助けたかが分かった。

「行動しないのが1番間違いだよ。どんな結果でも行動しないよりは必ず良かったと思えるから」

(この子、やっぱり昔の私に似てるところあるな)

だからこそ、かつて親友に背中を押され結果はともあれ救われたからこそ私も彼女を救いたかった。

「相談してよかったです。具体的に考えてみます」

「ちょっと待って、私いいもの持ってるんだけど」

そう言って私はポケットからある物を取り出し雲雀ちゃんに見せた。

「こっ、これは!」


昼下がりの日曜。

駅前の噴水で僕はそわそわしながらある人を待っていた。

昨日、雲雀がマンションを訪ねてきて映画に誘われた。

日曜日だし、特に予定もなかったので快諾した。

(女子と2人なんて久しぶりだな・・・)

あまり白石さんともしばらく出かけてないし、1番最後に出かけたのは恐らく雲雀とカフェに行った時が最後だろう。

「おっ、お待たせ!」

雲雀が走ってこっちに向かってきた。

「ごめんね、待った?」

「今来たところ」

初めて雲雀の私服を見た。

白いワンピースに赤いカーディガンを羽織り、少し小さめのバッグ。

周りの女性(白石さんとか姉さん)がファッションに疎く、その女性らしい服装に不覚にもドキッとしてしまった。

「似合ってないかな?」

「いや、その・・・いいと思う」

すると雲雀は、不機嫌そうに聞いてきた。

「いいと思うじゃなくて!具体的に!」

女子のこういうところが尋常じゃなく苦手だ。

「にっ、似合ってる・・・」

「あっ、ありがと・・・」

(この空間から、逃げ出したい・・・)

「そろそろ行こうか」

そんな僕の気持ちなどつゆ知らず雲雀は僕の手を引いて歩き出した。

(そういえば、なんの映画見るんだろ)


「DEAD or DEVIL2枚ですね。二番スクリーンにお入り下さい」

ガチホラー映画だった。

「これって、今世紀最大に怖いって言われてるあれだよね」

雲雀に問いかけると何故だか返事が返ってこなかった。

「雲雀?」

「ガタガタガタ」

口でガタガタ言うほど怖がっていた。

「雲雀、怖いの苦手なんだ」

「苦手じゃないから!むっ、武者震いだから!」

そう言って見始めた雲雀だったが終始びっくりし、後半になるともう僕の腕をがっちりと掴んでいた。

「怖かった?」

意外と僕は怖がることもなく、物語をしっかりと見ることが出来た。

「全然、怖くなかった」

「僕の腕掴んでたのに?」

「違っ、あれはアキの腕を掴んで幽霊みたいにして驚かせてたの!」

普段ならもう少しまともだが、今日の雲雀はなんだかいつもとは違った印象を受けた。


「アキは夕食どうするの?」

このままお開きにはしたくなかったのでなんとかアキを引き止めようとした。

「遅くなるかもとは言ってるけど、白石さん心配なんだよなぁ・・・そうだ!一緒に家で食べない?」

(あっ、私の恋は終わっんだ)

彼の人生には必ず白石さんが入ってくる。

きっと私のことを考えていないわけではなく、1人でも多くの人のこと考えているのだろう。

「だったらここで今日はお開きにして白石さんと食べなよ」

「雲雀はどうするの?」

「私は自分の家で食べるよ」

「そっか、またいつでも来てね。それじゃあまた明日」

彼はそう言いながら駅へと行ってしまった。

「・・・私も帰るか」

私も駅へと行こうとすると、いつの間にか来ていたミキさんに肩を掴まれた。

「話、聞いてもいい?」

そう言ってミキさんはアキと私がよく通っていたカフェへときた。

そろそろ店じまいだというのに、私たちを見て店内を貸切にしてくれた。

「私、きっぱり諦めることにしたんです」

「・・・それで本当にいいの?」

「私は確かにアキのことが好きでした。だからこそアキには幸せになって欲しかった。だから白石さんと一緒に・・・」

言葉が続かず目からは涙が零れて、嗚咽が漏れだした。

「うっ、あ・・・・・・うわあああああっーーー!」

「ありがとう。本当にありがとう。アキのためにそんなに泣いてくれて」

ミキさんも目から涙を流しながら共感してくれた。

お互いに親友として、姉弟として幸せになって欲しいからこそでた涙だった。




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