第15話

「それで?雲雀ちゃんとは仲直りしたの?」

私は週が開けた火曜日、聞きたかったことをふと聞いてみた。

「もともと喧嘩はしてないんですけどね」

次の日、学校に行くと雲雀は、何事も無かったかのように接してきたらしい。

「それならよかった。私は仕事あるから先に行くけど、洗い物お願いしていい?」

「普段から僕がしてるじゃないですか」

そうやっていつものやり取りを交わすと私は少し足早に会社へと向かった。

「おはようございます」

何度やってもこの挨拶の時だけは少し鬱になってしまう。

「おはよう白石、昨日まとめて貰った資料、部長の代わりに見ておいたから、営業部に渡してきてもらえる?」

峰山先輩はいつも私よりも早く来て仕事をしているのにクマ一つない。羨ましい

「ありがとうございます」

私はそう言うと荷物を置き営業部へと向かった。

それからは私も峰山先輩も相変わらずの忙しさで午前中が過ぎていった。

「つぅかぁれぇたぁ~~」

今日はなんとか昼休みを取ることが出来たので東先輩と昼食にすることにした。

「そういえば白石は社内旅行(半ば強制)はどうするの?」

「強制って言ってるじゃないですか・・・」

入社したての頃、東先輩の奨めで車内旅行について行くと東先輩の傍若無人っぷりに振り回された。

終わった後にほかの先輩から、東先輩の面倒を新人が見るのがこの会社の女のルールだと聞かされた。

「でもうちにアキ一人置いてくのが心配なんですよ・・・」

「・・・そうだね」

今この人絶対、逆以外は安心だと思っただろ・・・

「それだったら、連れてくれば良いんじゃない?」

「どうですかね・・・一応ダメ元で聞いてみることにします」


なんとか今日も仕事をやり切り、早速家に帰るとアキに聞いてみた。

「別にいいですよ。白石さんがいれば僕はいいですから」

(このナチュラル女たらしが・・・)

「あっ、ちなみに場所は箱根で、行くのは再来週の三連休だから」

「それは、つまり僕に支度をしておいて下さいと?」

「お願いします」

私はアキに会ってから少しだけダメ人間になった気がします。


それからあっという間に旅行の日になってしまった。

「おはよう白石、それと久しぶりだねアキくん」

「おはようございます東先輩」

「おはようございます」

集合場所に着くと、東先輩が挨拶してくれた。

「・・・東先輩、目の下のクマ、かなり凄いですよ」

「昨日も徹夜だったから」

((絶対に楽しみで眠れなかったやつだ))

「おはよう白石、それからアキくんと小学生」

「峰山お前もか!」

「そろそろバス出発しますよ」

「私、アキくんの隣で白石の話聞きたい~」

「えっ!東さん!?引っ張らないで、嫌ぁぁぁぁぁぁ白石さぁぁぁぁぁぁん!!」

(達者に生き抜けアキ)

「・・・俺たちも乗りましょうか」

「そうですね」

結局、私は峰山先輩の隣に座り二人で喋りこんでしまった。

「へぇ~白石さん小説好きなんだ」

「最近はあんまり読めてないんですけどね」

「作家とか目指してたの?」

「大学までは・・・」

アキとはまた違った日常会話は大いに盛り上がった。


「あっちかなり盛り上がってるな」

僕はさっきから東先輩と二人で白石さんたちをずっと見ている。

「やっぱり白石の隣がよかった?」

「そういうの理由ではなくて・・・」

「安心しろ、今日は寝かせないよ?」

「まだ朝ですけどね!」

こっちもこっちで盛り上がった。



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