第13話

あの日以来、雲雀が僕に対して素っ気ないような気がする。

思い切って理由を聞いてもはぐらかされてしまい、どうしようもなかった。

「何でなのか、女として白石さんにご教授願いたいです」

そこで日曜日の昼下がり、白石さんに相談してみた。

「アキ、私に女子高校生の気持ちなんてわかると思う?」

「元女子高生として、ぜひ!」

「大人の女性の大半は、元女子高生なんだけどな。それにこういう事だったら私よりミキとかの方がわかるんじゃない?」

「それが、姉さんに話したら電話切られちゃって」

「ミキ忙しかったんじゃない?」

「姉さんああ見えて恋バナみたいなの苦手なんですよね」


その頃ミキは

「最近、アキに冷たくしちゃって・・・」

(やってられるかああああああっ!)

ミキは

昨日の夜、アキの青春のお悩みのようなものを無視した後、初めて雲雀ちゃんからメールがきたと思ったらこれだ。

(どうして、アキといい雲雀ちゃんといい私に頼るのかな・・・)

確かに、ミキは楽しく青春は送っていったとは思うがそっちのことの話題が苦手だった。

(とりあえずなにか話さないと)

「どうしてアキのこと無視しちゃうの?」

きっとヤキモチとかジェラシーとかと、思っていた。

「虚しいんです。この前から、アキの隣にいると」

「虚しい?」

「アキには、白石さんっていう大事な人がいて、そんなふうに考えていると好きという気持ちでアキの隣が虚しくて」

(彼女も彼女なりに考えているんだな)

軽い恋愛相談ではない、彼女と、そしてアキへの気持ちを真剣に語っていた。

「アキのこと、そんなにも考えてくれてありがとう」

「そっ、そんな滅相もない!」

「だからこそ気になったんだけど。きっかけは何だったの?」

「ちょっと長くなっちゃうんですけど。私が今の高校に入学した頃ですね・・・」


高校入学初日、私は期待という名の不安を抱えていた。

学業の成績がそれなりによかった私は、地元の高校には行かず、上京して進学校と名高い高校へと入学した。

入学式が終わる頃にはなんとなくだがグループが出来ていて、そこに入ることが出来なかった。

(・・・帰ろう)

1人が急に虚しくなり1人で帰ることにした。

「あれ?もう帰るの?」

(誰だっけ)

帰ろうとした私を引き止めたのは、中性的な顔立ちの男子生徒だった。

「だったらお茶しにでも行かない?」

その言葉に下心が感じられず、二つ返事で了承してしまった。

「それでね、そこの店員さんが」

「そうなんだ」

「「・・・」」

(き、気まずい)

あっちは一生懸命話してくれるが私がそれにうまく受け答えができなかった。

「あっ、着いたよ」

彼が指を指す方向には、小洒落たカフェがあった。

「ここのケーキが凄く美味しいんだよ!」

先程よりも興奮したように語っていた。

(甘党なのかな)

「今日は僕が奢るから好きなの頼んで」

「私も払うから」

「すみませーん!コーヒー1つ」

「紅茶で」

「それからチーズケーキと日替わりケーキ。ケーキ食べれるでしょ?ここの美味しいんだよ」

少しだけ彼のことがわかってきた気がする。

それからしばらく彼の話を聞いているとケーキが運ばれてきた。

「お待たせしました!紅茶とコーヒー、それからケーキです」

(あれ、運ばれてきたケーキが違う)

私に置かれたのはチョコケーキ、彼に置かれたのはチーズケーキだった。

「アキくん、お姉さん応援してるぞ」

「余計なお世話です!」

「知り合い?」

「常連だから。それより早く食べない?」

言われるがままケーキに手をつけると、1口食べると口の中でケーキがホロホロと崩れた。

今までで1番美味しいケーキだった。

「・・・」

何故だか私のケーキを彼が凝視してきた。

「・・・もしかして食べたいの?」

「くれるの!?」

黙って私がケーキを差し出すと悪ぶれることもなくスプーンめいっぱいにケーキを取られた。

「やっぱりチョコケーキも美味しいなぁ」

それからすぐにお開きになったが、それからというものことある事に私を誘ってくれて気がつくと本心で語り合えるまでになっていた。

「ごめん!久しぶりにお茶行こうって誘ったのに遅れちゃった」

あれからしばらく経ち、久しぶりにあのカフェへ行くことになった。

「掃除当番だったんでしょ。あきらは?」

「あいつ甘いの苦手だから」

(二人っきりだ)

最近、妙に彼のことを目で追ってしまうし、なんだか二人でいられるのがとても幸せだ。

「・・・そういえばアキはどうして私に声かけてくれたの?」

カフェでケーキを待っている時にふと気になり聞いてみた。

「んー、孤立しちゃいそうだったから?」

「なんだかハッキリしないね」

「最初はそんな感じだったけど、今はこうして話せていて僕は声かけて正解だったと思ってるよ」

(あっ、私アキのこと好きだ)

この時から、私はアキを友達とは違ったまた別の目で追うようになってしまった。



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