第11話
帰ってくると家の中から楽しそうな声が聞こえてきた。
「ただいま、誰か来てるんですか?」
「アキおかえり、私も夕食、食べてくからよろしく」
「分かりましたよ……って、姉さん!?」
そこで楽しそうに談笑していたのは紛れもない僕と白石さんを引き離そうとしている本人だ。
「資料届けてくれてありがとう。熱もだいぶ下がってきたよ」
「インフルとかじゃなくて安心しました。でも今日はゆっくり寝ててください」
「もちろんそのつもりよ。アキに面倒事を押し付けて私は惰眠を貪るわ」
言い方もうちょっとなかったかな…
「白石さん、それと姉さん。何食べたいですか?」
「シチューとか食べたい」
「でも白石さん、リゾット食べたばっかりじゃないですか」
すると待っていたかのように姉さんが言い出した。
「だったら肉食べたい!」
「姉さんはお客さんでも無いのに何言ってるんだよ……そうだ、だったら間をとってビーフシチューにしましょうか」
じっくりと煮込むこと30分
「出来ましたよ!どうぞ」
「「「いただきます」」」
「リゾットとかは食べてたけどやっぱり普通のご飯美味しい」
「相変わらず美味しいのがムカつく」
「あの…言いにくいんですけど、姉さん僕の引越しの件はどうするの?」
「ああ、あれ?ゴメンやっぱり無理」
理由を聞くと何故だかはぐらかされてしまった。
「あれだけ僕たちが困ってたのに」
「ミキのそういうところだけ嫌い」
「ごめんって!タイミングが来たら話すから」
そんな雰囲気の中で夕食は終わった。
「私、泊まっててもいい?」
「明日、日曜だし別にいいけど」
「やった!それなら一緒にお風呂行こ」
「ちょっ、うちのお風呂そんなに大きくないんだけど」
「アキも一緒に入る?」
「さっさと入ってこい!」
そう言って姉さん達がお風呂に入っている間に片付けをし、洗濯器を回しリビングで課題に取り組むことにした。
「ミキまた大きくなったんじゃないの?」
「きゃっ!ちょっとぉ、仕返しだ!」
「やぁっ!そんなとこ、触っちゃ…」
(しゅ…集中出来ない……)
アキも年頃の男だ。
逆によく今まで白石さんとの生活が出来ていたか。
「アキ!お風呂出たよ!」
風呂場から姉さんが半裸で出てきた。
「姉さん!服くらいは着てよ!」
「ミキ!服くらい……」
ミキに服を着させようと白石さんまで風呂場から出てきたがその姿はまさに半裸だった。
「いやぁぁぁっ!」
白石さんとは思えない女の子のような声を出し叫ばれた。
(やばい!このままだと嫌われる)
「見っ、見てないですから!」
「そんな理由が通じるわけないでしょぉぉぉ!」
右頬に激しい痛みが襲ったが貰ったものとしては充分過ぎる代価だった。
(なんだか頭痛いな……)
朝いつもよりも頭痛から早く起きてしまった。
とりあえず熱を測ったが、38度をゆうに超えておりどうやら白石さんの風邪がうつったようだ。
「アキおはよーって、アキ顔かなり赤いけど風邪うった?」
「多分だけど」
「本当に?ごめんアキ、私自分のことで手一杯で」
「白石さんが気にすることじゃないですから」
「せめてお姉さんとして私で料理作るよ!」
「私も手伝うよ」
「下手くそは顔洗って席付いといてください」
「「………はい」」
料理概念崩壊人物(白石さん)と秩序崩壊料理人(姉さん)を厨房に立たせるわけにはいかなかった。
「料理できましたから僕は少し寝ときます」
(アキ大丈夫かな……)
付き合いはまだ浅いにしてもアキは自分のことを後回しにするよくも悪くも癖を持っている。
「アキ風邪ひいちゃったみたいだし、弱ったアキ見たいからもう少しここにいるよ」
「でも私たちじゃ家事なんて出来ないよ?」
するとミキは待っていたかのように言い出した。
「ちょうどいい知り合いがいるから」
「それで私たちが呼ばれたわけですね」
ミキが言っていた知り合いというのはアキの同級生たちだった。
「ミキさん、いくら僕がアキの幼なじみだからって家事の出来る女の子連れてこい、なんて言われても困りますから」
「でも連れてきてくれたじゃん。えっと、雲雀ちゃんだっけ私はミキ、アキの姉よ」
「初めまして、アキ、アキくんにはお世話になってます!」
ミキも自己紹介したようだし私もすることにした。
「私は、」
「白石さんですよね?」
「どうして私のこと知ってるの?」
「よくアキが話してくれるので」
「雲雀!適当なこと言わないでよ!」
寝ていたアキが辛そうに突っ込んできた。
「そうなんですよ、アキのやついっつも白石さんが白石さんが、って言ってますから」
「そっ、そうなんだ」
なんだか顔が赤くなってしまった。
「それなら私は洗濯と洗い物しときますね」
「「本当にすみません」」
女子高校生に嫁スキルで大差をつけられ私もミキも精神ダメージは尋常ではなかった。
「大丈夫ですって!家事が出来ることだけが女の取り柄では無いですから!」
必死にあきらくんが励ましてくれた。
「あきらくん、ありがとう」
「でもあきら、私より料理得意じゃん」
「あきらぁぁぁぁぁぁぁぁ!」
初対面の男の子に大声を出したのは2回目だ。
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