第10話
「……んっ」
普段は目覚まし時計で起きているが、今日はカーテンの隙間からの木漏れ日で目を覚ました。
(あのまま寝ちゃったのか)
その証拠に僕の右手には、すやすやと眠る白石さんの暖かい手が握られていた。
子供のように安心した寝顔で眠る白石さんに癒されながらも、額に触れると少し熱は下がったようだった。
このまましばらく白石さんの寝顔を見ていたかったが、朝食の支度をしなければとゆっくり白石さんから手を離した。
(学校に連絡もしないとだ)
白石さんを病院に連れていかない行けないので早々に学校へ午前中の欠席を伝えた。
「おはよ」
白石さんが眠そうに目をこすりながら起きてきた。
「おはようございます。着替えて朝ごはん食べましょ」
1度白石さんは部屋に戻りあっという間に着替えてくると席に座った。
「まだ体調あんまり良くないんですから会社休みです」
制服に着替えた白石さんにそう言うと大人しく着替えて来た。
そうして久しぶりに2人の朝食をとった。
「食べ終わったら病院行きたいので保険証とか出しといてください」
「わかった」
どうやらまだ残念白石さんとしばらく付き合うことになりそうだ。
食べ終わった後、食器の片付けをしているとすぐに保険証が見つかったようだったのですぐに病院に行くことにした。
「白石さーん診察室にお入り下さーい」
人は少なくすぐに白石さんの番になった。
若い女の先生が診察をしてくれるようだ。
「風邪かな、多分疲れてるから免疫が弱くなってたんだろうね」
大変な病気では無さそうだったので少し安心した。
「薬は出しとくけど、この調子で働き続けてたら倒れると思うよ、彼氏さんかな?気をつけてあげてね」
「分かりました、ありがとうございます」
薬局で薬を貰い家路についた。
「昼食食べたら僕1度学校行きますね」
そう言って昼食にはうどんを手早く作った。
「白石さん、メール来てますよ」
「東先輩から資料の提出今日までだからアキくんでも渡しに来てだって」
「放課後になるので遅れるかもですけど分かりました」
白石さんから資料を貰い、白石さんには寝ているように言ってマンションを出た。
「あれ?今日は来ないかと思った」
「午前中に白石さん病院に連れてったから」
「白石さんとは仲直りしたのね」
「おかげ様でね」
「……せっかくのチャンスだったのに」
「どうしたの?雲雀」
「何でもない」
雲雀は最近白石さんの話をすると少し不機嫌な気がする。
「あきらも、色々ありがとう」
「俺は何もしてないから」
相変わらず変なところで気が利くあきらだ。
午後の授業は眠気が襲ってきたがなんとか乗り切り放課後になった。
「今日も用事なのか?」
「ごめんちょっとね。雲雀にもよろしく伝えといて」
あきらにそう言って、すぐに電車に乗り昨日来たばかりの白石さんの会社へ来た。
(やっぱり何度来ても緊張するな……)
そこまで大きい会社では無かったが、慌ただしく動く人たちの中に来るのは緊張した。
(でも資料誰に渡せばいいんだろ……)
「君、この会社に何の用かな?」
前から歩いてきた顔立ちの整った男の人に声をかけられた。
「し、白石さんの……」
「白石さん?ああ!資料を届けてくれたんだね。ありがとう、東に渡しておくよ」
「それでは、失礼します!」
資料を渡し、逃げるように会社から出た。
「東、資料届けてくれたぞ」
「おっ、さんきゅ。届けてくれたの男の子?」
「そうだったが、誰なんだ」
(やば、話してなかった…)
峰山が少なからず白石に気があることを知っており素直にアキくんのことを伝えればめんどくさくなることはわかっていた。
「えーっと、私の友達?」
「さすがに騙されないぞ」
(やばいやばいやばい、どうしよ)
本当のことも言えず困ってしまった。
「……その、あれなのか?かっ…彼氏」
「多分違うよ」
「多分?」
(……やべ)
「……そうなんだな」
このまま勘違い(?)されるくらいだったら本当のことを言った方がいいだろう。
「違うから、アキくんって言って白石さんの家に居候してるの」
「白石とあいつが?2人で?」
(あいつって言い出しちゃったよ)
「……白石が…あいつと……」
(めんどくせぇぇ!)
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