みちのり その2
オオカミ先生と別れてから数時間後、そこそこ暗くなってきた。
「この辺で一息つかない?」
「ソウダネ。今日ハコノ辺二シヨウカ?」
「ふぃー」
気の抜けた声が出た。
適当にじゃぱりまんにかじり付く。
水を飲んで…ん?
もう水がない。
「えぇー…」
まいったな。寝袋なんざ無いので寝られねえし、寝られても、明日にゃ体が悲鳴を上げるだろう。つーかまだ寝るような時間でもなさそうだし。
あーぁ…
布団が恋しい。ベッドに寝そべる快感が恋しい。ふんわりあったかい布団よ…
あー!
(一時間後くらい)
寒い…
ラッキービースト=ロボットなので、
モーターとかであったかいと思ったが…
ちめたい…
くそう…。
(さらに三十分程度)
月が見える。夜も更ける。
水が欲しい。
「ねぇ、ラッキービースト。近くに飲める水ない?」
山道が続く。池の一個や二個あるだろう。
「アルヨ。イクカイ?」
ビンゴ!やったぜ。
「もちろん。」
脇道の茂みの奥。
綺麗な湧き水。
水の音が響く。
弦をはじく音と共に。
歩を進める。
舗装していない、
何かが作ったけもの道を。
「ギター…かな?音が聞こえる。」
「誰ダロウネ」
しばらくして水辺に着いた。
木の葉が体についている事には気づかず、水筒に入る分マックスに入れ、がぶ飲みを繰り返す。水は大事だ。
水が体に染みきった時、道中も聞こえたギターの音がしっかり聞こえた。
背後にその正体を捉える。
黒いフード付きの大きなパーカーを身に付けている女の子だ。フードを深くかぶっていて、顔がよく見えないが…
パーカーには人の手っぽい物で描かれた猫があしらわれている。
「お?」
女の子はギターを弾く手を止める。
「どなたですかぁ?」
「俺はシキ。あなたは?」
「スナネコです。」
オオカミ先生もそうなんだが、動物由来の 芸名?ペンネーム?が多いなここ。
この人は猫か。
「お客さんですかぁ?」
そんなつもりじゃないが…ちょっと聞いてみたいな。
「お願い出来る?」
「じゃぱりまん二個で一曲。どうです?」
わかった、そう言いつつじゃぱりまんを渡す。
「では、聞いて下さい。」
「ぼくのフレンド」
心地よい声だ。
柔らかく、優しい声。
____________________
「あちゃー…寝てますねぇー」
スナネコは拾った布をかぶせると、
弦の1本切れたギターを持ってどこかへ行ってしまった。
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