第10話 閑話・不死王の物語(後編)
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おっさんたちがダンジョンに来て悪魔パズズと戦った後日談
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「あの時の約束通り、勝負しにきたっすよ
バルバロッサ商店の娘ゾフィーは鼻息荒くやってきた。
『いや、ゾフィーちゃん……この惨状を見てそれ言うの?』
悪魔パズズがとてつもない攻撃でダンジョン最下層の壁をぶち抜いたせいで、デッドエンドオーバーロードの玄室は瓦礫が散乱してめちゃくちゃになっていた。
勇者や旧神に聖竜、そして神様まで現れたあとなので、デッドエンドオーバーロードは落ち着き払ったものだった。
『と言うか、ちょっと聞いてくれる?』
デッドエンドオーバーロードはゾフィーに事の說明をした。
とあるとんでもなく偉い人から頼まれて、妖魔妖怪妖獣の類を集めるため、旅に出なければならないこと。それのお供に
黙って聞いていたゾフィーはボロボロと涙の粒を落とし始めた。
『って、ええ!? 今の話に泣き所あった!?』
「わかってるっす……人と幻魔。結ばれない運命なのはわかってるっす! これでも商売人の娘なんで現実は知ってるっす!!」
『んんー? う、うん?』
「けど、自分じゃなくて
『いや、すごく偉い人にそう指示されて、だね……』
「言い訳なんかいらないっす!!」
『えー、そこでキレちゃうの!?』
「うわあああああああん!! 自分、振られたっすぅぅぅぅぅ!!」
壊れた玄室内にゾフィーの鳴き声が響き渡る。
どういうわけか、
『あ、いたんだ
デッドエンドオーバーロードはまったくその存在に気が付いていなかった。
『!』
「なるほど~」
突然目の前に黒装束で顔も黒頭巾で隠した人物が湧いて出たので、ゾフィーはびっくりして泣き止んだ。
『!』
デッドエンドオーバーロードと
「あー、いいですいいです。今の私はただの人ですから」
手をひらひらとさせながら、ディレ帝国の暗部リーダー、デッドエンド氏は優しげに言う。
「いいですよ、こちらのお嬢さんも同伴されても」
『え……ええ!? も、申し上げますがこちらは普通の人間でして……』
「いいじゃないですか。好いた者同士が一緒にいるのは自然なことですから」
『幻魔と人間が一緒にいるのは不自然かと……』
「別に私は人間と幻魔は結ばれない、なんてことを決めた覚えないんですけどね」
そんな事を決める────この世界の事象や摂理を管理する「神」だから言えることだ。
「あなたが偉い人っすか!?」
ゾフィーが食いつく。
デッドエンドオーバーロードと
「自分も不死王さんと同行していいって本当っすね!?」
「えぇ、どうぞどうぞ。なんなら頑張って子作りして新しい幻魔をニ、三匹生んでください」
「いやん恥ずかしい♥」
ゾフィーが照れたように顔を隠す。
『というか、骨しかない私にそんな能力ないかと……』
「人も幻魔も努力すればどうにかなるんじゃないですかね。あ、私はそろそろ。あとは頼みましたよ、みなさん」
黒衣装の男はスッと消えた。
どういう仕掛けなのかとゾフィーはキョロキョロしているが、この玄室内にはもういない。
『無茶苦茶言い放しでどこか行った……ひどい』
デッドエンドオーバーロードは自分ににじりよるゾフィーと
「いいともさ!」
バルバロッサ商店の親父は、娘に軽く説明されただけで、デッドエンドオーバーロードとの旅の同伴を許可した。
「けど、あんた。ゾフィーが不死王さんたちと旅に行くのは良いとして、ダンジョンの管理は誰がしてくれるんだい?」
肝っ玉母さん風の嫁さんは親父に言う。娘のことなんかほっといて、別の心配をしているようだ。
「なるほどね。それならいいんじゃないか?」
「いいともさ。うちの娘で役立つのなら連れて行っておくれよ」
『通じたの!?』
デッドエンドオーバーロードは一人ついていけていない感に膝が折れそうだった。
「父ちゃん、母ちゃん、次会う時は子連れで帰ってくるっすよ!」
「おう、期待してるぜバカ娘」
「うちの娘がこんな立派な人と、うう、あたしゃ嬉しいよ!」
『あの二人共? 私は幻魔だよ? なにかトチ狂ってない?』
「幻魔も妖魔もへったくれもねぇや。あんたぁいい男だからな!」
『いやぁ、随分へったくれだと思うけど……』
気がついたらダンジョンの上にある屋台村の店主たちがわいわい集まってきて、デッドエンドオーバーロードたちを取り囲んでいる。
「いやぁ、ついに嫁入りかぁ」
「首なし騎士ちゃんも? やるねぇ大将!」
「両手に花でハネムーンかい!」
「こりゃ帰ってくるときゃ子連れってのもあながちありえるね!」
『あー、みなさん? 頭大丈夫? 私幻魔。ほら、見て。身体骸骨だからね?』
そうしているとダンジョンに挑もうとしていた冒険者たちも集まってきた。
「お、ダンジョン主さんが地上に来てるなんて珍しい」
「ダンジョン主さんが旅に出るってよー」
「マジか~、ちょっと誰かダンジョン潜ってる連中呼んできて!」
「見送りすっぞ、お前ら!」
『えーと、冒険者諸君? 私、君たちにとって敵だからね?」
もう何がなんだか。
デッドエンドオーバーロードは頭を抱える。
そこに冒険者ギルド支局の受付嬢が現れた。
『え……なに?』
「デッドエンドオーバーロードさんがこのダンジョンからいなくなるにあたって、冒険者の皆さんは【きれいに使う】【討伐しすぎない】【最下層は封鎖】でおねがいします。いいですか!」
「「「ういーっす」」」
「デッドエンドオーバーロードさんのご帰還を心よりお待ち致しております」
『うーん? 冒険者ギルドがそんなこと言っていいの!? 私は君たちを倒す敵ですよ?』
「倒される方が悪いのです。冒険者なのですから」
受付嬢はデッドエンドオーバーロードにウインクしてみせた。
「さあ、みなさん。ダンジョン主と奥方二人を見送りますよ!」
『奥方じゃないんだけど……』
押し出されるようにデッドエンドオーバーロードは前に進み、道の両脇に人が並んで盛大な拍手を……お愛想の拍手ではなく、心から喜びを表現する拍手を浴びせてくる。
『なんだこれ……なんだこれ……』
呪詛のように唱えつつ、右腕にゾフィー、左腕に
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