第23話 閑話・テミスの独白

 なんじゃ。独白?


 ふむ。


 名乗ればいいのか?


 私はテミス。栄えあるティターンが戦士だ。


「旧神」たる巨人族ティターン12柱と呼ばれ、法と掟の女神とも呼ばれていた。


 ちなみにこの仰々しい喋り方は緊張している時の癖だ。大目に見てくれ。


 そりゃ緊張もする。なんで独白を記録する必要があるのだ!?


 ま、まぁいい。ここはお前たち先妻に従おう。


 む? この鎧か? 露出が多くて気になる?


 ははは。これは飾りに過ぎぬ。ティターンたるもの己が肉体こそ最強の鎧でなくてはな。見るがいい、この腹直筋と外腹斜筋と内腹斜筋と腹横筋を。美しかろう。


 元の姿に戻ろうか? 5メートルくらいになるが。いや、なに。本来の姿になったほうが腹筋の美しさが引き立つかと。いらぬか、そうか。


 それにしてもジューンは凄い。


 私の脛当てを一撃粉砕し、私自身にもあれほどのダメージを………断っておくが私の脛当てはオリハルコンだ。天上天下この世の万物すべての中で最高強度の金属で、加工できるのは神しかおらぬ。それを一撃粉砕だぞ?


 いやぁ、ここ数千、いや、数万年? 私はずっとここで【吸収剣ドレインブレイド】を使って自らを慰めていたが、いやはやジューンがいれば新しい世界が切り開けそうだ。


 慰めるの意味?


 アレをアレに当てて、こう。


 ドン引きするな! 冗談に決まってるだろうが!


 さて、話を戻そうか。


 今後どうしたいのか?


 別にどうもこうも。ジューンと共にあるだけだ。


 ジューンが望めば他の十二柱の住む迷宮を巡ってもいいし。


 この世の王になりたいというのならすべての王族共を縊り殺してそうするし。


 魔王を討伐したいというのであれば力を貸そう。


 私は健気けなげな女だから、夫のために尽くす。


 ただ、浮気はダメだ。死ぬことすら生ぬるい地獄を見せてやる────と、いっても私より強いからなぁ。夕食に毒でも混ぜるしかないな。


 ああ、もちろん先妻の二人は別だ。好きに○○○○したり○○○したり、お目覚めの朝○○○してもらって構わない。私が○○○○している時は遠慮してもらいたいが○○でも私はかまわないぞ。ジューンならそれくらいの体力と○○○があるから────ん? 伏せ字ピー音が多すぎてわからない?


 私は旧神とは言え女神だからな。女神様が言っちゃいけない卑猥語を口にすると規制がかかる仕様だ。そう。仕様だ。この世のことわりというやつだ。


 そういえばジューン不老化計画についてだが、その前にやつはなにか悩んでいるようだな?


 先妻の二人もそれを感じ取ってこんな独白などさせているのだろう?


 ジューンは魔王を倒せず殺されたときのことを考えているのだろうな。残された私達の安否も含めて悩んでいるとみた。


 ふふ。


 かわいいではないか。


 魔王など私の指先一つで爆死あべしっだと言うのに、そんないらぬ心配を私たちに向けてくれるなど。


 ちなみにジューンが片手間でやっても魔王は圧死たわばっだと思うぞ。


 クシャナとエリゴスは………うーむ。ちと難しいかもな。


 なに。先妻殿は私が守ってみせよう。


 妻たるもの、夫が一番輝くタイミングを奪うことなどできないからな。魔王討伐を成就させ、その後ろを歩いてこそだ。

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