第22話 ジューンはエリゴスと向き合った。

「隷属させたつもりはないぞ」


 ジューンがぶっきらぼうに言うと、エリゴスは「じゃあしてください」と言い出した。


「そういう趣向はないから」


「ジューン様。魔族は基本的に享楽主義なんです。さぁ、下僕しもべを満足させてこそのあるじですよ!」


「いや、下僕にした覚えはないから。解放しただろ? 勝手についてきてるのはお前だ」


「そんなつれないことを!」


「さらに結婚するだのなんだのと、随分話を勝手に飛躍させているが」


「嫌ですか! 私が魔族だからですか!?」


「いや。そもそもお前は俺を好きなわけじゃないだろ?」


「純粋に子孫繁栄させるために、超強力な子種の持ち主として好きですけど?」


「俺を種馬みたいに言うなよ」


「価値観の違いですかねぇ。魔族的には最高の褒め言葉なんですけど」


「本気なのか」


「本気です」


「うーん………俺はおっさんだぞ」


「けど実年齢は私のほうが上です」


「………」


「ま、今はいいんじゃないですか? アホ魔王を倒した後に考えれば」


「ほんとに考え方が刹那的なんだな」


「魔族は寿命長いですから深く考えないんです。むしろ人間はすぐにあれこれ悩み過ぎなんです」


「寿命短いから、すぐに悩んですぐに答えを見つけないと次に進めないんだよ」


「ジューン様なら悩まないでしょう?」


「悩みは努力で全部解決する」


「女三人に言い寄られていることも努力でなんとかできるでしょう?」


「………努力する」


 向き合っては見たものの、ジューンはエリゴスに言い負かされていた。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る