Ⅱ.始まり
「その時」が、世界の終末が、ラグナロクが始まります。「鉄の森」にいる巨人の子が狼藉を働きます。太陽を追っていた狼のスコルはとうとうそれを完全に飲み込み、ハティに追われていた月も同じような最期を遂げます。こうして空から星の光すら消えていくのです。
天変地異が起こり、大地震や大規模な崩落によってフェンリルをつなぐ岩などの拘束具はもはや彼をとどめておくことはできません。巨人の見張り人は竪琴を奏で、赤の雄鶏フィアラルがとうとう巨人たちに終末の時を作ると、同じく神々にも金色のグリンカムビが時を作ります。
続いて海がヨルムンガンドの到来で荒れ狂うと、その狂瀾にのって死人の爪という不気味な材料で出来た霊船ナグルファルがやってきます。巨人とヘルの住人たちが乗るその船は、ヴィグリードという最終決戦の場にむけてフリムが舵を切っています。
さて、次の時にはもうロキの怪物たち――フェンリルとヨルムンガンド――がそのヴィグリードめがけて押し寄せます。フェンリルは最も獰猛で、下あごを地面に擦りながら上あごも天に擦らせます。目の中には炎が燃えていて、それが鼻から噴き出しています。
ヨルムンガンドの方はといえば、世界中に猛毒をまき散らしており、生命という生命を枯らし、滅しつくします。
原始の世界からその存在が認められるムスペルヘイムからは、スルトが炎をまき散らしながらやってきます。その時天が破れて、その裂け目からも炎を纏った「ムスペルの息子」たちが進軍してくると、世界はますます混乱するのです。最後に「ムスペルの息子」たちが乗る馬は、燃えるビフレストを崩壊させます。
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