Ⅷ.神々の御曹司バルドル

 〈名前〉

 語源は「白い」、「栄光」或いは「主君」という意味があると考えられています。主君と言えば、主人という意味を持つフレイと似ているのかとも思いましたが、そもそも主人と主君では格が違いますね。それに彼は、最も優れた神という扱いをされています。少し見方を変えれば「よそ者」となるフレイなどに比べられては、アース神族の面目がつぶれてしまいます。


 〈属性〉

 オーディンとフリッグの間の息子で、オーディンの最愛の子です。容姿端麗で、もはや清らかさそのものと例えられることあります。また、性格もよく、人を裁く際に優柔不断であること以外は欠点と呼べるものがなかったためにすべての神と人間に愛されます。居住地はブレイザブリクで、そこには不浄なるものが入ることはできません。彼が持つ大船フリングホルニは世界にそれ以上の大きさの船がないというほどの大きさを誇っていますが、この船が神話で登場する機会は彼が死んでしまった時しかありません。


 〈死の予兆〉

 ある時から、彼は不幸な夢を見るようになります。その内容が自らの死であったために、父親のオーディンに不安を打ち明けると、彼は父として、そして何より愛する息子のためと思い、わざわざ冥界に赴き、女予言者に夢の意味を尋ねました。彼女の返答は、要約するとバルドルの死期が近いとのことでしたので、神々はブレイザブリクに集まり集会を開き、バルドルの母親フリッグが世界中のありとあらゆるもの(植物や動物などの生物はもちろん、金属、水、病気から巨人に至るまですべて)にたいして彼を傷つけないという旨の契約を結ばせます。


 〈ロキの策略〉

 こうして不死の状態になったバルドルを祝し、神々は色々なものを彼に投げ合って遊ぶようになりました。しかし、ここでひねくれもののロキは、彼が甘やかされていることを快く思わなかったために、なんとかして彼を痛い目に合わせてやろうと画策します。女の姿に化けたロキはフリッグのところへいくと、彼が今何をされているかなど話します。そしてそのうちに巧みな話術をつかって「ヴァルハラの西に生えている若いヤドリギには契約をしなかった」という情報を得ると、次はそのヤドリギを獲得し、だれに投げさせるかを検討していました。

 再び神々が娯楽にふける集会場に行くと、一人だけその輪に入れずにいる神を見つけました。その名はヘズ。バルドルの異腹の弟にして闇の神です。彼は目が見えなかったために、その遊びに参加できずにいたのでした。ロキは彼に標準を定めると、さきほどのヤドリギを彼に渡し「ほら、どうしてみんなと同じように物を投げない? オレがバルドルの場所を教えるから、これを投げるといい」とそそのかします。ヘズは喜んでそれを投げましたが、当然起こるのは彼が想像していた笑いや喜びの声ではありませんでした。

 バルドルの体にそのヤドリギが深々と刺さると、彼はその場に倒れ、神々が駆け寄って時にはすでに絶命していました。


 〈外見〉

 眉目秀麗ではありましたが、普通の「かっこいい」という言葉では収まり切りません。なにせ、自身が「光輝く」ほどの美しさというのですから。

 また、彼は花に例えられることもあるそうですが、その際は決まって白い花が引き合いに出されるといいます。この話から、彼は色白であるということもまた分かりますね。

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