Ⅱ. 最高の女神フリッグ

 〈名前〉

 語源は、「妻」や「愛されるもの」などといった意味の言葉らしいのですが、定かではありません。同じくランクの高い女神のフレイヤと名前が似ていますから、(FriggとFreyja)、最初はFrという二文字が「妻」なり「女主人」なり、とにかく地位の高い女性を意味しているのかもしれないと思っていましたが、どうやら違ったようです。Freyjaは主人という意味のFreyrの女性系らしいのです。この事実から、フリッグとフレイヤという名前には、あまり関係性が無いのかもしれませんね。


 〈属性〉

 母親は大地の女神フィヨルギュン(トールの母ヨルズと同一視される)。オーディンの正妻の座を勝ち取ることで、女神の中では最高位に、神のなかでも相当高い位に位置しています。彼女は結婚、そして家庭内での主婦の守護をつかさどる女神で、さながらギリシャ神話のヘラのようです。……が、オーディンの二人の弟たち、ヴィリ、ヴェーとも肉体関係をもつなど、ふしだらな点もあり、ロキに非難されています。また、未来予知の力が備わっているとされ、神々と人間の運命を熟知しているのですが、自発的に語ろうとはしません。

 もうひとつ、彼女は鋭い洞察力をもっているとされ、これはオーディンをもしのぐことがあるといいます。この能力、技術はまさに女性の性格を神格化したものでしょう。

 アースガルドにフェンサリルという館を持っていて、ミッドガルドで正しい生活を送った夫婦を死後迎えて祝福するとされています。彼女はこの館に引きこもりがちなのですが、魔法の羽衣を所持しており、つけると空を迅速に駆け巡ることができるといいます。

 このように、最高神の配偶者にふさわしい権力、能力を持っているのですが、信仰はフレイヤよりも集められなかったといいます。しかし一方で、金曜日の英名Fridayにその名が冠せられている通り、生活には浸透していたようです。また金曜日に結婚を行う風習が、一部のゲルマン民族間で残っていたようです。


 〈玉座に坐するもの〉

 フリッグは、オーディンと共にフリズスキャルブに座する権利を持ちます。これについては、二人のみが座る権利を持つと考えても問題はないと思いますが、フレイが絶世の美女ゲルドを見つけたのはこのフリズスキャルブに座っていたからでした。おそらくですが、”権利”を持つ者はオーディン夫妻ですが、座ろうと思えば他の神でも座れるのでしょう。もっとも、世界中の情報が一気に頭に流れ込んでくるのですから、それ相応の処理能力が求められます。そこを考慮すると、やはり座ることのできる神はほんの一握りです。ですから、フリッグがこの玉座に座れるということが彼女の地位を示していると言えます。(完)

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