むらのろうじんA...
@623kkk
第1話
俺、藍川 龍太(あいかわ りゅうた)。
専門学校を卒業して20歳で都内の美容室に就職。
みんな知ってるかな?この業界って結構ブラックでさ。
朝は7時半に出勤、仕事終わって、カットの練習して…気づいたら日付が変わってるなんてこともしばしば。
そんな生活をもう3年以上続けている。
「もうすぐ0時…俺も24歳か…誕生日くらい家で迎えたかったなあ」
家へと帰る途中、電車を待ちながら俺はボヤいた。
なんて事ない、いつもと同じ駅でいつもと同じように電車を待っている。
ふと、正面から歩いてくる老人が気になった。
何故気になったのかは分からないが、その老人をつい目で追ってしまっていた。
すると…。
ドンッ!
俺の前を歩いていた人がすれ違いざまに老人にぶつかった。
老人はホームから線路へ落ちそうになり…ハッ!と思うと俺の手はすでに老人へと伸びていた。
(あ…やっべ…)
疲れ切っていた俺の身体は老人の身体を引き寄せる事は出来ず、と思いきや自分の体も支えきれずに一緒に線路へと落下した。
『間も無く、特急列車が通過します。黄色い線の内側へおさがりください』
「そういえば、黄色い線の内側って結局どこの事なんだろうって話をネットで見たな…ってそれどころじゃない!このままじゃ有名なSF漫画みたいになっちゃうぞ!おじいさん立てる?!」
……反応がないただのしかば…
ムクッ
老人が起き上がった
しかし、時すでに遅し。
流石は特急である、何という速度だろうか。
そして一瞬、圧倒的な衝撃が全身に走る。
瞬間、目の前が真っ暗になった…。
〔すまないことをしてしまった。君は…まだ生きたいだろう?私はもう随分と長く生きた。君さえよければ私の力を君に与えたい。〕
頭の中に老齢の男性の声が響いた。
先程の老人の声だろうか。
(俺、もうすぐ24歳だったし…死にたくはないなあ…)
〔本当にすまない。私の力では君を、君の世界に君として存在させる事は出来ない…。それでも構わないだろうか?〕
(構わない…ってことはないけどこのまま死ぬよりそっちの方がよさそうだな…本当にそんなこと出来るのか分からないけど、どうせなら頼むよおじいさん…)
〔分かった…ならば準備を始めたい。君の魂と君の世界、君の肉体は強く紐付けされている。一度、君自身の意思でその紐付けを解いてくれないか?〕
(なんだそれ…どうすればいいんだ?)
〔君の肉体は先程の事故で使い物にならないだろうし、私が君の世界に対して関与できる事は少ない。私はこれから、君の魂を異なる世界に召喚したいと思っている〕
(お…うん、それでどうすればいい?)
〔「我が魂は、世界と肉体を全て放棄する」と強く念じてくれ〕
(わかった、よく分からないけどやってみる)
龍太は強く念じた。
すると、真っ暗な景色が弾けて真っ白になった。
〔うむ、上手くいったようだ。君の魂は今、どこにも属さず漂っている状態だ〕
(な…なるほど?)
〔そして、私の世界へ君の魂を受け入れる〕
(受け入れありがとうございます?)
〔さあ、これで魂と新たな世界の紐付けは出来た。次は肉体だが…50年ほど待ってもらいたい〕
(え?嫌だよ50年なんて。今までの俺の人生の倍以上も待たなきゃいけないじゃん)
〔う…うむ…。それほど長いとは感じなかったが、私が長く生きているせいか感覚が違うのかもしれん…ならば、すぐに用意しよう〕
(なるべくちゃちゃっとお願いします!)
〔うむ…そんなに急ぐとは思わなんだ…。分かった、今回のことは私のせいでもある。今すぐ空いている肉体に君を転生させよう〕
(魂だけの状態ってのも落ち着かないし、急がせてしまったけど…本当に転生できるのだとしたらどんな世界で何をすればいいのか、その辺は転生してからゆっくり考えよう)
〔そうだ、転生するときに何か欲しいスキルはあるか?〕
(スキル?よく分からないけど欲しいものなら技術と休暇と広い家かな)
〔分かった、私の方で適当に付けておくとしよう。では新たな世界への扉を今開こう〕
その言葉と共に、真っ白な世界が更に白く輝き、やがて景色が見えてきた。
〔一つ言い忘れておったが、此度のことで力を使い過ぎたから私は少し眠りにつく。この世界でどうするかは自分で決めてくれ〕
意識は一度プツリと途切れ、気がつくと森の湖畔に横になっていた。
美しい湖を覗くと、そこには年老いた男の姿が映っていた。
むらのろうじんA... @623kkk
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