第11話 初朝
中世ヨーロッパ風の部屋に机と柔らかそうなベッド、天井にはシャンデリアがある。
ベッドには一人の少年が寝ている。
窓から朝日がこぼれる。
「ふぁ~、朝かぁ~」
眠い目を擦りパジャマ姿の少年は驚いた。
目の前に広がるのは中世ヨーロッパの世界観そのものだった。
「ま…まだ夢…?」
(どういうこと…?夢の中で寝たってこと…?それとも…)
イタッ
疑問だらけだったが筋肉痛でそんなことはどうでもよくなった。
体が、足がとにかく痛い。
運動不足を強く痛感した。
そして、運動しようと心に決める。
ギュルルルルルル
(お腹すいたなぁ…)
悩む。
瞬間移動で昨日のご飯を食べたところへ行くか、
それともカイロが来るのを待つか。
昨日の場所へいったとして人はいるのだろうか。
あの場所は宴の時しか使わないという可能性もある。
カイロが来ないという可能性もある。
どうするべきか。
(携帯あればなぁ……)
そう考えても仕方ない。
どうするべきか。
「魔法使っちゃうか!」
恐らくだがイメージすれば何でもできる気がした。
そもそも瞬間移動ができるのだ。
人を呼ぶくらいならなんとかなる気がした。
心の中で呟く。
(カイロさん来て、カイロさん来て、カイロさん来て…)
返事はなかった。
だめだったかと、別の方法を考えようとしたがその必要はなくなった。
バタンッ
「魔導師様!お呼びでしょうか!」
鎧を着たカイロが扉を勢いよく開け、ハキハキと喋る。
「え…えっと…」
戸惑った。
魔法でさきほどのメッセージが伝わったのか、それともたまたまか。
戸惑う姿を見てか、カイロが続けた。
「魔導師様の声が聞こえた気がしたのですが…」
(!!!)
魔法はなんでもできるのかという思いと自分はなんでもできるという思いが込み上げた。
「それで…なにかご用ですか?」
カイロは顔色を伺っているようだった。
呼ばれていないのにドアを開けたことに後悔でもしているのだろうか。
「お腹が空いて…朝御飯を…」
カイロの顔が明るくなった。
「わかりました!すぐに準備をいたします!昨晩と同じ場所でよろしいでしょうか?」
軽く頷いた。
「では、昨晩の場所にご準備いたします。いつでもよろしいのでおいでになってください。」
「わかりました。」
カイロはそういうとドアを閉めようとした。
「ありがとうございます!」
バタンッ
(ありがとうございます?なんかしたっけ?)
不思議に思ったが、なんのことか聞く前にカイロは行ってしまった。
とりあえずご飯を食べることを優先しようと思った。
「マヨネーズ」
昨日と同じ場所に移動した。
幾人かメイドのような、お手伝いさんのような人が驚いているが気にしない。
とりあえず座って周りを見た。
しかし、昨日とは別の場所に思えた。
朝と夜だからではない。
昨日はとにかく食べることに頭が一杯だった。
今、冷静に見てみると物凄くきれいだ。
シャンデリアだけではない。
テーブル、座っている椅子、絵画、すべてが現実のものとは思えないほどきれいだった。
(あ、これ夢だったか…)
自分で自分につっこんだとき誰かが入ってきた。
「おはようございます!魔導師様!よく眠られましたか?」
カイロと軍団長だった。
軍団長は朝なのにきっちりと白銀の鎧を着ている。
(格好いいなぁ…)
「お、おはようございます。よくねむれました。」
「今日はどうされますか?」
「町を見てみたいです。」
「わかりました。朝食後、案内させて頂きましょう。」
軍団長が椅子に腰かけるくらいのタイミングで料理が運ばれてくる。
食パンにスクランブルエッグ、ウインナー…ベーコン…
それらによく似たものが目に入る。
それらはほとんど自分が知っているものと大差はなかった。
ベーコンを口にしたとき、目を丸くした。
(あ、ベーコンそのままだ。ベーコンだ!)
目の前にあるベーコンはベーコンの味がするベーコンだった。
「こ…これ!ベーコンですか?」
興奮ぎみで聞いた。
「そうですよ。」
ベーコンはあるんだと、嬉しく思い朝からお腹に入るだけベーコンを食べた。
(ベーコンがあるなら…豚っぽい生き物がいるのかな…パンもあるし…トンカツ作れるじゃん!)
お腹一杯になるまでベーコンを食べ続けた。
朝からこんなにも食べられるのかと自分でも驚くほど食した。
ふと、周りを見た。
軍団長とカイロ、メイドのような…使用人という言葉が適切だろうか、とにかく幾人かが今、この場にいるがそのすべての視線が自分にあることに気づいた。
(あれ…みんなもう食べ終わったんだ…)
「ごちそうさまでした!」
恥ずかしく、すぐに食べるのをやめた。
食べ終えたのを確認したのか、軍団長が話しかけてきた。
「魔導師様、カイロに城下を案内させます。」
そういうと、カイロは会釈した。
「余すところなく、案内させて頂きます!準備ができましたら、また、先ほどのように、呼んでいただけますでしょうか?」
ハキハキとした声で話す。
軍団長が案内してくれるものだと思っていたため、少し驚いたが、
軍団長は暇ではないと思い、頷いた。
「では!また後程!」
「我が国をお楽しみください!」
軍団長とカイロは出ていった。
使用人と自分だけになった。
少し気まずかった。
「マヨネーズ」
すぐに自室に戻った。
まず、今すぐやるべきことがある。
「服装…魔導師…どうしようか…」
魔導師の服装がわからなかった。
スーツは違うし、着たこともない。
漫画のイメージだと帽子やフードを被りローブを着て不思議な杖を持っているイメージだ。
(とりあえず…着てみるか…)
「ソース、ソース」
鏡が部屋にはなかったため鏡も出した。
鏡に映る自分の姿を見て言葉がでなかった。
あまりにも似合っている。
真っ黒のローブは白の縁取りがしてあり、腕には金のラインが入っている。
ローブの間から見える服は白であり、対比が美しかった。
(僕も案外捨てたもんじゃないな…)
しかし自分だけの評価では少し心許なかった。
カイロに見てもらえばいいと、自分のなかですぐに完結した。
カイロに見てもらう前に、杖をどうにかしなければならなかった。
ローブだけでは格好がつかなかった。
(まぁ…杖は…カイロさんに聞こう)
「さぁ…いくか。」
(カイロさん、どこにいますか?)
心の中で呟く。
(あ、魔導師さま!城門です!今からそちらへ向かう…)
カイロの声が聞こえた。
(そこにいてください、今からいきます。)
「マヨネーズ」
目の前には目を丸くさせているカイロがいた。
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