第10話 初夜

「ぷはぁぁぁ」


「お口にあったようでなによりです。」


 恵国の王、ロロが笑顔で言う。

お腹がいっぱいになったら眠くなってきた。


「ふぁぁあうううお」


 大きなあくびをした。

王の前で失礼かとあくびをしたあと顔色を伺ったがどうやらなにも問題はないようだ。


「魔導師様!城下町の散策はいかがいたしましょう?今日はおやすみになられますか?おやすみになられますか?」


 軍団長が聞いてきた。


(うーん…ねむいなぁ…もう外もくらいし…城下町も気になるけど…)

「今日は寝ます!」


「分かりました。お部屋をご用意いたしますのでその間、是非恵国城自慢の湯に浸かってください。」


(また風呂かぁ…めんどくさいな…)


 そう思ったが食事も、部屋も用意してくれるのだ。

断れない。


「わかりました。」


 面倒だとさりげなく伝わる声で答えた。


「カイロ!風呂の用意を!」


 軍団長がカイロに命じカイロはまた走っていく。


(カイロっていう人大変そうだな…)


◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇


「お風呂の準備ができました!」


 カイロがまたまた走ってやってきていった。

待ってましたと立ち上がりカイロについていく。


(歩くの本当に辛いのに…)


 ぶつぶつ文句を言いながらとぼとぼ歩く。


「こちらになります!」


 ダルかったがとりあえず開かれた扉の先を見た。


「ほぉぅわぁっ」


 変な声が出てしまった。

脱衣場は日本の大浴場と変わりはなかった。

だがお風呂の大きさが尋常ではなかった。

五十メートルプールほどの大きさはあるだろう。


急いで服を脱いだ。

(早く入りたい!)

その一心だった。

興奮で疲れは感じなかった。


服を脱ぐとすぐに扉の向こうへといく。


(すぐにお風呂に入りたい!…でもさすがにだめだよね…)


 シャワーを浴びにいくと、日本式ではないようだった。


(…え?立つの?ムリムリムリムリムリ。座らせてくれ…)


 とにかく立っていたくなかった。


「ソース!」


 魔法で座る椅子を出した。

ゆっくりと座る。


(あぁ…本当につかれた…)


ジャーー


 シャワーを浴びた。

興奮で汗も書いていたためちょうどよかった。

まず頭を洗う。

シャンプーはどこにあるのか分からなかった。

だからもうシャワーを浴びてお風呂に浸かろうとした瞬間。


「お背中をお流しいたします。」


 後ろから声が聞こえた。

ビックリして振り向くと、物凄くきれいな女の人がタオルを巻いている。


「えっ?…えっ!?」


「お背中をお流ししてもよろしいでしょうか?」


 ダメなわけないだろ!とは言えるはずもない。

もう目はおっぱいにしか集中していない。


「あ!やっぱりダイジョブ…デ…ス…」


 ダメな理由が一つあった。

いや、出来てしまった。

さすがに大人の女性に見られるわけにはいかない。


 体を洗い終えると座ったままお風呂へと移動した。

もちろん、瞬間移動 で。

とんでもなく広い風呂に浸かっているといろんな事が疑問に思えてきた。

夢なのにお腹がすくのか。

コータとはどんな動物か。

なぜ、トンカツがないのか。

そもそも本当に夢なのか。


(明日、町案内を軍団長に頼もう。あ、でも夢覚めるかな…)


 風呂を出る。

瞬間移動で。

脱衣場へ行くがふと思う。


(あ、パジャマ…変えたいな…)


(服も魔法で出せるかな…?)

「ソース!」


 真っ裸だった体にパンっと服がまとわりつく。

魔法とはなんと便利なものだと感心しているとカイロがやってきた。


「魔導師様、お部屋のご準備をいたしました。こちらです。」


 もう本当に歩くのは無理だ!心から思った。


「すいません、部屋をイメージしてください。」


「ん?あ、あぁ。はい。わかりました。」


 カイロは一瞬なんのことかわかっていない様子だったが、すぐに理解を示してきた。


「マヨネーズ」


 一瞬で部屋についた。

そこは中世ヨーロッパのイメージのままのような部屋だった。

天井にはシャンデリア、床には見るからに高価そうな絨毯、壁には絵画…


(そういえば…さっきご飯食べたところにはもっと大きいシャンデリアがあったっけ…食べるのに必死すぎて…)


 自分の食欲に理性が負けたことを恥ずかしく思いながらもベッドへ向かう。


「疲れたぁー!!」

ドスンッ


 ベッドに倒れこんだが思ったよりも固かった。

床に倒れているような感覚だった。


「い…いてぇ…ふふっふふっふっ」


 自分のことがバカらしすぎて思わず笑ってしまった。

柔らかいベッドがいいと一度立ち上がる。


「ソース」


 ふかふかのベッドがそこにはあった。


「疲れたぁー!!」


 今度はしっかりふかふかだった。

そのまま僕は深い眠りについた。

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