第2話 キャンプ場
「いやー愉快、愉快。団長!人間狩りは楽しいな!」
「人間はうまいしな!特に女の肉は最高だ!柔らかくてうまい!」
「明日からは隣の国の恵国で人間狩りをしよう」
「しばらくは食べることに困らないな‼」
火を囲むようにして肉や酒を食べ飲みしているのは馬人である。
ここは那国にある馬人のキャンプ場。
馬人は普段は馬人の国、ホーセン、通称『蛮国』に住んでいる。
彼らは基本的に国の外へ出ない。
人間が外の世界を支配しているからではない。
例えば放牧している牛と同じ場所に寝られるだろうか。
あまり気持ちよくはないだろう。
それと同じことである。
人間は馬人からすると家畜みたいなものである。
だから彼らが人間の国へ入るときというのは【肉】を求めているときなのである。
そして今、彼らは何台もある馬車のような巨大な台車の半分ほどの【肉】を手に入れ、それを祝い、酒を飲んでいるところだ。
「団長!明日は女をたくさん狩りましょうよ‼」
「いい村があればな…」
皆から団長と呼ばれるこの男は他の馬人とは少し様子が違い、騒がしい中一人冷静でいる。
この馬人は他にもほかの馬人と違う点がいくつかある。
馬人は普段、タンクトップのような服しか着ない。
その服には胸のあたりに青地に黄色の×がついている。
しかしその馬人のそれは赤地に金の×が五つついている。
他にはこの馬人の右腕には大きなトラにでも引っかかれたような傷が見える。
右腕といったのには訳があり、この馬人には左腕はみられない。左腕がないのだ。
「おぉ‼戻ったか、セレンよ!」
一人の馬人が声をかけたほうをみると女らしき馬人がいる。
女らしき馬人がいう。
「団長、偵察からただいま戻りました。ここから西へしばらく行くと恵国ですが、入ったらすぐに小さな村があります。人口も十分だとおもわれます。ただ、一つ気がかりなことがありまして…」
「なにがあるというのだ‼」
年老いた馬人がセレンに問う。
「最近、恵国と水国との戦争があったそうです。そして水国は大敗したそうです。」
「なにっっっ⁉水国は我々ホーセンの同盟国。恵国をいつでも滅ぼすことができるように水国にはホーセンの兵士を何万と派遣していたはずだが…。それに水国にはゴギン殿がいるはずではないか。あの人間がいるからこそホーセンは水国と同盟を結ぶことになったのだ…ゴギン殿や兵士は戦争へは行かなかったのか?」
「それが…ホーセンの兵士数十名と水国の大戦士ゴギン様、水国の兵士数名を残して壊滅したそうです。残った者たちは皆重傷であるそうです。ゴギン様がいなければ全滅は避けられなかったと聞きました。」
「嘘をつくな⁉」
(ゴギン殿は複数のドラゴン相手でも勝てるのだぞ…!)
その場にいた馬人が一気にセレンのほうを向く。
酒を飲み肉を食べていた馬人も例外ではない。
それも当然だ。
馬人一人に対して人間が十人で襲い掛かってきても馬人は負けない。
さらにいうならゴギンという人物は全生物に対して優位に立つことができる能力を持っているのだ。
たとえ馬人一万人でかかっても勝つことはできない。
争ってもホーセンが勝つのはゆるぎないことであるが、多くの犠牲が出てしまうために同盟を結ぶことになったのである。
そのような巨大な力をもってしても壊滅だというのだ。
とても信じられる話ではない。
「アイラン様、嘘ではないようです。水国からの使者の話です。」
「その使者が恵国の偽装で偽物だという可能性は?」
その可能性に光が見え、希望ができたと団長がうなづいた。
「いいえ、確実に本物です。星の紋章が胸にあるのを確認しました。さらに例の合言葉も知っておりました。」
「そんな馬鹿な‼それほどまでに恵国は強大な軍勢だったのか⁉どうやったらそこまでの戦力を手にいれることができる。何があったのだ。どれほどの数だったのだ‼」
アイランはものすごい剣幕でセレンに怒鳴る。
「一人」
セレンは絶望に満ちた表情で言った。
「………ハッ」
その場にいたもの全員が、その状況を受け入れられずに鼻で笑った
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます