【カレンとミルテの義姉弟―其の二】

 私とミルテは聖カテリーナ教国の兵士養成所に入所した。


 村を出ておおよそ一年。旅の途中で教国の情報を得た。

 教国が兵を育て、見込みの有る者を更に上位の施設で練兵し、魔物退治に特化した冒険者に育て各地に派遣しているとのことだった。

 これは公に教国が各国に広めている情報であり、信憑性は高かった。

 他に類似した情報が無かったことと、魔物退治に主眼を置いた練兵を行っているということが私達の目的と一致し、私達は教国を目指したのだった。

 一年の時間を掛けてしまったことは不本意ではあったが、その間に出会った冒険者や街の憲兵から武器の扱い、魔物の情報など、得られるものは何でも吸収した。

 おかげで養成所の入所テストにも難なく合格し、晴れて養成兵となれたのだ。

 養成所では私とミルテは別々の寮に入り、練兵も別になってしまった。

 男と女なのだからそれは仕方がないが、学ぶ内容が違うということが問題だった。

 男は剣、槍、格闘などの直接戦闘を主に学び、女は医療技術、魔術などの間接戦闘、補助を学ぶ時間が長い。


 はっきり言って、私はミルテが羨ましかった。

 間接戦闘や補助が重要な役割だということは勿論理解している。

 攻守が優れていてこそ、一つの戦力と言えるのは一年の旅の中で頭に叩き込んだことの一つだ。

 が、私とミルテは等しく魔物を憎んでいる。

 私だって魔物の肉に刃を突き立て、喉を断ち切ってやりたい。

 魔物共の血肉を撒き散らし、臓物を抉ってやりたいのだ。


 私の担当教官となった女に男達と同じ内容を学べないかと尋ねたが、それはダメだと諭された。

 攻守の大切さを渾渾こんこんと説かれた。

 歯痒い。

 しかし、今は未だ私の実力なんてたかが知れている。実力の無い者が何を喚いても、その言が聞き入れられる訳も、受け入れられる訳も無い。

 望みがあるのなら相応の実力を以て交渉しなければ、子供の我が儘と何ら変わり無いのだから。

 更なる力を得たければ、己の力を証明するしか無い。


 別の懸念も立ち上がった。ミルテのことだ。

 両親が魔物に殺されてから、私達姉弟が離れることはこれまで一度も無かった。

 ミルテは泣き虫の弱い男の子ではなくなったが、優しい性格は昔と変わらないままだ。

 寮に入り、新しい環境や仲間に馴染めるだろうか。

 顔も悪くないから女共に色目を使われたぶらかされたりしないだろうか。

 過保護かも知れないが、たった一人の私の家族だ。

 私の心配は尽きなかった。


(To be continued)

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