【モーガンと相棒―其の二】

 俺の名はモーガン。泣く子も黙る用心棒だ。

 傭兵をしていた頃もある。

 そして傭兵になる前は冒険者として世界中を旅してたこともあるんだぜ。

 あれは俺が30になる前だから、もう20年以上も昔のことだ。

 あの頃は若かったし、青かった。

 余計なお世話を焼いたこともあるし、手を出さなくていいことにちょっかいを出して痛い目に遭ったこともある。懐かしいぜ。


「モーガンさん、退屈だわ。何かお話してくださらない?」

 俺が雇い主ことケイティ嬢ちゃんの部屋の前で佇んでいると、部屋から嬢ちゃんが出て来てそう言った。

 飼い猫を大事そうに抱っこしている。

「ケイティよ、俺はおめぇの用心棒じゃああるが、お守りじゃねぇんだぜ? どうして俺が退屈凌ぎに付き合わなきゃいけねぇんだい? 退屈ならその猫と遊んでりゃ良いじゃねぇか」

「ええ。確かにモーガンさんは私の用心棒であって、使用人でも駒使いでもないわ。それくらいは解っています。でも、雇い主と用心棒という関係なのだから、信頼関係というものは大事ではなくて? 貴方とお話するのは、それだけで有意義だと思うの。どうかしら。貴方にとっても悪い話じゃないでしょう?」

 おうおう。中々的を射た事を言ってくれるじゃねぇか。

「ふぅむ。まあ、そうだな。ケイティの言う事は尤もだと思うぜ。俺も暇であることは事実だ。長時間突っ立ってんのも楽じゃねぇ。よし分かった、暇潰しの相手になってやろうじゃあねぇか。で、どんな話をしようってんだい?」

「それを考えるのも貴方のお仕事よ? レディをエスコートして下さるのも紳士の務めだと思うのだけれど?」

「おいおい、よしてくれよ。ケイティだって分かってるだろう? 俺は紳士なんて柄じゃあねぇし、レディをエスコート出来るような器用な性格もしちゃあいねぇぜ。話の振りくらいはそっちからしてくれよ」

「仕方ないわね。では、信頼関係の構築ということで、先ずは貴方の昔話でもしてもらいましょうか。私の何倍も生きていらっしゃるのだから、沢山の経験をなさっているのでしょう? 冒険譚の一つもあるのではなくて?」

「冒険譚ねぇ。まあ、無くはねぇがな」

「出来れば人助けのような英雄譚が良いわね。爽快なのが良いわ」

 無茶を言いやがる。

「爽快かは分からねぇが、まあ……人助けならあるな」

「では、お茶の準備をさせるから入って頂戴」


 お茶にお呼ばれとは、俺の生活も変わったもんだぜ。


(To be continued)

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