【ピピリとピリリの隊商道中記―其の二】

 ウチ達は今、砂漠の小さなオアシスに滞在しています。

 たいちょーさんの説明によると、この先の砂漠を越えると山岳地帯に入るそうです。その辺りには砂漠地帯とは異なる魔物が棲息していて、山岳地帯の魔物に対応する準備がいるらしいです。

 対応と言っても、魔物とまともに戦っていては次の街に着くまでに被害が出てしまいます。

 特に積み荷の一部である干し肉や干し果実などの保存食を奪われたり、武具などが壊されたりしては一大事です。隊の生活に関わってきます。

 ウチ達の隊商は中規模から大規模の中間くらいなので、武力はあまり備わっていません。

 それに、ウチとおねーちゃんはたいちょーさんに拾ってもらっただけの半獣人の姉妹です。

 冒険者のように身を守る力を持っているわけではないので、荷の番としても役立たずです。むしろウチ達のほうがお荷物です。

 なので魔除けのお守りを幌車に取り付けたり、魔物が嫌う匂いを放つ香を焚いて魔物を遠ざけるんです。

 そしてウチとおねーちゃんの二人は幌車にお守りを付けている最中なのでした。


「ねえピピリ、私達は腕力こそ無いけれど、半獣人としての俊敏さがあるわ。小型のナイフや弓の技術を磨いて、少しでも戦力になるように努力しましょう?」

「ピリリ。ウチも同じこと考えてたよ。いちおー死んだとーちゃんからナイフの使い方と弓の手入れは教えてもらったけど、それを使いこなす技がないもんね」


 身を守る力を付けることはもちろん重要ですが、ウチ達二人も隊商の一員です。

 隊と、隊の生活を守ることも重要なお仕事だと思うんです。

 だって、隊商の仲間は家族なんです。ウチとピリリは、隊商の家族の一員なんです。

 家族の為に頑張ることは、すごく重要なんです。


「ピリリ、何から始めたら良いと思う? 弓かな? ウチとピリリが前に出ても邪魔になるだけだと思うんだ。だから、後ろから支援するのが良いんじゃないかな」

「ピピリ、そうね。私もそう思うわ。お世話になる前は私とピピリで狩りをする為に弓を使っていたし、俊敏さがあるぶん前線で動くことがかえって邪魔なるかも」


 そうと決まればさっそく今日から練習を始めよう。

 たいちょーにお願いして、手軽な弓矢を揃えてもらって、隊員で弓が上手な人も教えてもらおう。

 ふっふっふ。嬉しいな。隊の皆の為に役立てることが増えたんだ。また一歩、家族に近付けたなー。


(To be continued)

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