【カレンとミルテの義姉弟】

 弟のミルテは泣き虫だ。


 いつも私の後ろを泣きながら付いて来る。

 芋虫を首にくっ付けたら気持ちが悪いと泣き出す。

 私が蜥蜴で遊んでいたら可哀想だと泣き出す。

 飼っていた山羊が病気で痩せて死んだ時は死ぬまでも、死んでからも毎日泣いていた。

 私と初めて会った日。

 私は6歳。

 ミルテは5歳。

 新しいママとミルテが私とパパの家にやって来た時もママの後ろに隠れてめそめそと泣いていた。

 だから無理矢理引っ張ってママから離したら大声で泣いた。

 私がママと仲良くなりたくてお裁縫を教えてほしいとお願いした時も一人だけ仲間外れだと納屋に隠れて泣いていた。


 ミルテは泣き虫だ。

 私は9歳に、ミルテは8歳になった。


 パパとママが死んだ。

 私とミルテが近くの野原に出掛けていた間に、魔物が家を襲って二人とも死んだ。

 その日はママのお誕生日だった。

 私とミルテはママの為にお花の冠を作りに出掛けていて助かった。

 パパは朝から張り切って、ママの為に慣れない料理を作っていた。

 家に帰ると、パパとママが仲良く血まみれの塊になってバラバラに転がっていた。

 パパが作った美味しくなさそうな料理はテーブルから落ちてぐちゃぐちゃになっていた。

 

 私は泣いた。

 ミルテも泣いた。

 泣き喚く私を抱き締めてミルテは泣いた。


 何とか魔物から逃げ出し避難していた近所のおばさん夫婦が私達を見付けて養ってくれた。


 ミルテは泣かなくなった。

 私は泣き虫になった。


 毎夜、夢にうなされる。

 パパとママが魔物に食べられる夢。

 花冠を作って帰る私とミルテ。

 ミルテは何時もの様に私の後ろを付いて来る。

 家に着くとドアが大きく開いていて、急いで中に入ると真っ黒い影の様なもやに包まれた獣がパパとママを咀嚼している。

 横を見ると、さっきまで後ろにいた筈のミルテが魔物の餌食になっている。

 私は恐怖で叫び、夢から飛び起きる。

 隣には私を抱き締めて落ち着かせようとするミルテ。


 ミルテが泣いている姿を、私はあれから見ていない。

 私は15歳に、ミルテは14歳になった。


 今日、私達はお世話になったおばさん夫婦の家を出る。

 魔物を殺す為に、冒険者になる。

 何処かの国で、強い魔物を殺す為に修業できると旅人から教わった。

 私達は、どんな魔物も絶対に赦さない。


(To be continued)

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る