【モーガンと相棒】

 俺の名はモーガン。泣く子も黙る用心棒だ。

 傭兵をしていた頃もある。

 俺を雇えば一騎当千。

 なんて言われて一世を風靡した。

 あの頃は、世は俺の時代だ。なんて天狗になったもんだ。


 が、俺の時代なんて瞬く間に終わった。

 いや、そもそも俺の時代なんて始まってすらもなかったんだと後から気付いた。

 俺はただ雇い主に担がれて調子に乗っていただけの戦争屋だった。


 今は、とある国のとある都市に住むとある富豪に雇われている。

 さる御仁の警護が俺の仕事だ。

 そう依頼されて俺はやって来たんだ。

 が、これは一体全体どういうこった。

 金持ちの護衛ってんだから、財界だか政界だかのじじぃのお守りなんだと思ってたら、何だこりゃあ? どういう冗談だよオイ。

 俺が小娘のお守りだと?


「俺の名はモーガン。泣く子も黙る用心棒だ」

「こんにちはモーガンさん。私はケイティ。泣かないから黙ることもないけどよろしくね」

 俺がいつも通り名乗りをあげると(昔と違って俺も謙虚になったが、第一印象は大事だ)ケイティと名乗るがきんちょは小生意気にそう言い放った。

 俺にビビってる様子はねぇ。

 ペットなのか、小さい白い猫を抱き抱えて俺を下から真っ直ぐに見詰めてきやがる。

「おい、嬢ちゃん。おめぇは俺が恐くねぇのかよ?」

「恐くないわ。私は雇い主の孫娘ですもの。私に何かしたら、契約不履行で貴方が罰せられるだけの話よ。それと、嬢ちゃんなんてお子様扱いしないで。私のことはケイティと呼んでちょうだい。小さいけれど、私はレディなのよ?」


 ペラペラとよく喋るがきんちょだと思ったが、言ってることはその通りだ。

 こいつは自分の立場と俺の立場をよく解ってやがる。

 やりづれぇが、こういう生意気ながきんちょは嫌いじゃねぇ。

 胆が据わってるやつぁ、昔から嫌いじゃねぇんだ。


「よし分かったケイティ。もうおめぇさんのことをがきんちょとは呼ばねぇ。おめぇは小せぇが胆が据わってる気持ちいい奴だ。対等に相手するぜ」

「モーガンさん、何を勘違いしてるの?私と貴方は対等じゃあないわ。私の祖父が貴方を雇っているのだから、貴方は私より下よ」


 おいおい。冗談だろ。

 生意気なだけで、ちっとも可愛げがねぇじゃねぇか。

 金持ちの子ってのぁ、やっぱこういうもんなのかねぇ。


 可愛いのはケイティが抱えてる猫くらいだぜ。

 

(To be continued)

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