第一章 トンネルを越えた? その2


 ホームには私と碧くん以外、だぁれも降りてない。なんだか不安……

「ほかの人……人じゃなくて動物だけど。って誰も降りてこないんだね」

 一緒に並んで立つ碧くんを見上げて言う。

 私より10センチ近く身長が高いから、顔を見ようとするとどうしても「見上げて」になっちゃう。碧くんに言わせれば、『お前の身長が平均より低すぎるの。俺は普通』なんだけどね。悔しいけれど、それは正論で、私、かなり身長、低いんだよね…

 で。見上げた碧くんの表情は、なんとも嫌そうな感じだった。足元を見てて。

どうしたんだろ?

 不思議に思って私も足元を見た。別に何もいないけど。変わったとこも別に……あえて言うなら、このホーム、白くて綿というか、雲というか、形容しがたいぶよぶよしたもので出来てるってことくらい。足がちょっと埋もれちゃう……あ。

 私、ある事に気が付いて、足元から碧くんに視線を移す。

「そっか。碧くん、得体のしれないぶよぶよして掴みところのないものって嫌いだったんだ」

笑って言うと、碧くんてば、デコピンして

「いらんこと、言うな」

だって。いったーい。

 私がそのぶよぶよしたものを、一握りして反撃しようとしたとき、声がして……私は手を止めた。

「―――ようこそいらっしゃいました」

 目の前に、何処から現れたのか、キツネが一匹、いた。白衣着て。黒ぶちメガネかけて。

 手の中のぶよぶよしたもの、捨ててから、私、碧くんとキツネを交互に見、溜息ついた。もう、別に、驚きはしないけど、ね。

「どうぞ、こちらへ」

――私と碧くんがそのキツネについて行ったのは、ほかに行くところがなかったし、キツネは私と碧くんの名前、知ってたから、多分、私と碧くんが「ここ」にいる理由を知ってるんじゃないのかなって思ったから。というよりは、それしか選択がなかったってことでもあるんだけど…。何かあっても、碧くんが一緒だし、何とかなるだろうから、心配は何もしてないけどね。



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