サラという少女その4

 涼はここに来てから、今までサラがやってきたアレやこれやを代わりにやるようになる。

 掃除をすれば、ゴミどころか、誇り1つ落ちていない状態に常にできるようになった。今まで雑然としていた部屋が、キチンと整理整頓されたのである。当然、サラも手伝ってのことであるが。

 さて、プロトにとっては重大な問題が発生している。

「サラが、あたしにかまってくれないにゃ」

 今まで2人だったのが3人になったのである。

 そんな中、サラは涼と話すことが多くなった。

 プロトは、涼に対抗心を燃やして、対決を挑む。

 

「さっそく勝負にゃ!もともと『1本のロウソク』という意味がある……」

一張羅いっちょうら

「くう、次にゃ。ポルトガルという国の言葉で『悪意』という意味がある、サッカーで必要とされるずる賢さのことを」

「マリーシア。つづりはmalicia」

「次にゃ!ブルーベリーの役18倍のポリフェノールが含まれる……」

「アサイー」

「うむむ、次にゃ。英語でiceと言えば……」

「氷?」

「サラちゃん、まだ途中にゃ、後これはあたしと涼の対決にゃ。icicleと言えば……」

「つらら。プロト、サラが答えてるのにその態度はないよ」

「……ごめんにゃさい。じゃあ気を取り直して次にゃ。形が似ている馬具にちなんで名づけられた『小骨しょうこつ』……」

「あぶみ骨」

「むむむ、にゃかにゃかやるにゃ」



 一方、2人に付き合いながら、涼はプディングを作っていた。

 バター:40グラムくらい

 砂糖:35グラムくらい

 卵:1個

で、バターと卵は室温の戻して、卵は溶きほぐす。

 先に作っていた型での内側全体に、バターを薄く塗って、オープンシートを、底み置く。

 ボウルにバターを入れて、砂糖を加えて、クリーム状になるまで混ぜる。

 卵を3回に分けていれ、さらに混ぜる。

 薄力粉、ベーキングパウダー、ミックススパイスをふるいながらくわえて、さらにパン粉、レーズン、カランツ、オレンジジュース、牛乳を混ぜ加える。

 型に作った生地を流し入れ、オープンシートで内ぶたをする。オープンシートとアルミホイルでしっかりカバーして、鍋に入れふたをして、鍋底に火の先があたるくらいの中火で2時間くらい蒸す。

(鍋に入れるお湯は型の半分より少し上をたもち、フツフツ煮立ってる状態にして、減ってきたら熱湯を足し湯)

 中心に竹串をさして、生地がつかなければ完成できあがり




「なんか楽しそうですにゃあ」

「ホントにな」

3人がじゃれあっているのを見ていた次郎とマリーは、そんな感慨にふけっていた。

「それにしても、涼ちゃんを彼女たちに付けた理由はにゃんですか?」

と、マリーが聞く。

すると、次郎は少し考えた風にアゴをさわりながら

「なに、サラちゃんだけに、衣食住を任せるわけにもいかないだろ?後は……」

「後は?」

「……それこそ、彼女たちを守るための、っというのもあるかな?」

「?こんな厳重に管理され、監視されてる施設をワザワザ襲うようなのが、いるんですかにゃ?」

「そりゃ、ウヨウヨいるだろうさ」

と、次郎は遠くを見るような目をして呟いた。

マリーは、どうやら次郎が何かしらの情報を得てると感じたが

(まあ、本人が言わにゃいなら、無理に聞かにゃくてもいいか)

と、考えて訊ねなかった。

それを、彼女は後々後悔することになるのだが。


さて、プロトと涼のクイズ対決+サラはまだ続いている。

「これにゃらどうにゃ!

『rpm』という単位によって表されてる、自転車の1分間……」

「ケイデンス。つづりはcadenceだっけ?たしか」

「……正解にゃ。次、ポルトガルという国の言葉で軸や中心という意味がある、サッカーでいうとフォワードにあたるフットサルのポジション……」

「ピブォ。ディフェンダーはフィクソで、ミッドフィルダーはアラ、ゴールキーパーはゴレイロだったけ?」

「にゃ、補足までやるとは……。次、ソ連という国の衛星スプートニク1号の打ち上げにちなむ、見た目から『走るダンボール』……」

「トラバント。東ドイツという国の小型自動車だったね」

「うう、正解にゃ、次。温厚でのんびりした性格や態度を四字熟語で……」

しゅんぷうたいとう

「……次にゃ!、別名をトレンチャーキャップという、正方形の頂上から房が垂れ下がった、儀礼用の帽子……」

「モルタルボード。つづりはmortarboardだね」

「うぐぐ、まだにゃ、まだ終わらないにゃ!」

「まだ、続くんだ……」


と、サラと強制クイズ対決をしながら、涼は今日のゴハン用にリンゴを使った和え物を作っていた。

春菊:半分くらい

リンゴ:半分くらい

クルミ:25グラムくらい

砂糖、醤油:大さじ1杯くらい

で、春菊は塩を少しくわえてさっとゆでて、冷水で色止め(急激に冷まして、変色を防ぐ)して、3センチくらいに切る。

リンゴは櫛形に4等分して、マッチ棒程度の太さに切って、薄い塩水に5分くらいつけて、ざるにあげておく。

最後に、クルミをすり鉢で粒が少し残るくらいににして、砂糖、醤油で味付けして、春菊とリンゴを和えて完成できあがり


プロトの悔しそうな顔を見ながら、サラは呟いた。

「なんか、プロト雰囲気かわったね……」

「ええ、どこが変わったにゃ。自分では普段通りのつもりにゃんだけど」

と、プロトは唇を尖らせながら、返した。

「うん……、私とクイズしていた時と違って、なんか宿命のライバルと出会って、楽しそう……」

「そんなことにゃい、にゃんであんなやつと!」

そんな様子を見て、涼は思わず噴き出してしまった。

「いや、あんたら、本当に仲良いよな」


涼とプロトの知識対決は続く

「将棋、チェス、オセロのように、偶然に左右されない、理論上は先読みがかにょうなゲームを…」

「二人零和有限確定完全情報ゲーム」

「……へ?」

「く、正解にゃ」

「ええ……、正解なんだ」

「次にゃ、作家みたいに文章を書くことによって生計をたてることを、硯を田んぼにみたてた四字熟語で……」

ひっこうけんでん

「正解にゃ、次。

教会の鐘をコンサートで使うために開発された、別名を『チャイム』……」

「チューブラ・ベルだったけ?」

「正解にゃ、次。

ワインの生産地における気候や土壌といった自然環境……」

「テロワール。つづりはterroirだったかな?」

「正解にゃ、次。

ガンダムに登場する要塞の名前にもなっている、チトールという土地にある『勝利の塔』にすむ…」

「ア・バオ・ア・クゥー」

「ぬぬぬ、アニメもいけるにょかにゃ……」


さて、そんな知識勝負をしながら、涼はプロトが頑張って研いだごはんにあった味噌汁と、鶏の塩焼きを作っていた。

味噌汁は

豆腐:1丁と半分

ナメコ:100グラムくらい

白味噌:150グラムくらい

赤味噌:小さじ1と半分

で、豆腐は正方形に食べやすいサイズに切る。

ナメコはざるにあけ、洗って水気を切って、熱湯でさっとゆでる。

出汁を温めて、白味噌と赤味噌を溶き、一度こす。

鍋に豆腐を塩と一緒に入れて、温める。

お椀に豆腐とナメコと味噌をいれた出汁を入れて、完成できあがり

次に、鶏の塩焼き。

鶏モモ肉:300グラムくらい

塩麹(こうじ):大さじ1

で、鶏モモ肉は余分な皮や筋を取って、厚みを均一化する。

鶏モモ肉に塩鞠をまぶし、ある程度おく。

フライパンに油をしき、皮目から焼いて、返したら蓋をして、7分くらい中火で焼く。

フライパンから取り出して、5分くらいおいてから、食べやすい大きさに盛り付けて完成できあがり


「うん……、サッパリして美味しいね……」

「え、マジ、やった!」

涼が軽くガッツポーズをとる。

「そういってもらえるとありがたいねえ」

と、サラと涼が手を取り合って喜んでいるのを、ニヤニヤ見ていたプロトが、顔色を変える。

プロトの片眼鏡には、普段クイズを出す時にしか使わない、大小様々な情報が無数に沸き出す機能が備わっているのだが、その片眼鏡がある情報を伝えたのである。

「やあ、お久しぶり」

「あ、次郎さん……」

「ちょっと、プロト借りれるかな?」

「どうぞ、どうぞ」

「あたしの意思はにゃいのか!?」

というわけで、次郎に呼ばれたプロト。

「あんたが、あたしを呼んだということは、やっぱり……」

「うん、サラちゃんの能力を利用しようというがまた動き出した。

しかも……」

「知ってるにゃ。『コレクター』とかいうヤツが、と接触してるというはなしにゃね?」

「ああ、そうだ。かなりマズイことになってきてる」

次郎は、顔をほとんど真っ白にさせながら、うなずいた。

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faculty ~四人姉妹の物語~ 今村広樹 @yono

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