天京院一郎対談記第一回

 編集部注:本対談このインタビューは、天京院一郎氏の失踪前に複数回おこなわれたものである。

 彼は、ルネージュ女性惨殺事件の犯人として、ルネージュ市立精神病院に収容されていた。

 インタビューの依頼アポイントメントをした我々に対し、一郎氏側から

『弟の三郎が同席するなら受ける』

 と、条件が付けられたので、急遽たまたま休職中であった三郎氏がインタビュアーとなった本対談が実現したのである。

 本題である殺人事件の話だけでなく、好きなTVドラマ、映画や漫画、学生時代の武勇伝、兵士時代の南部戦線で見聞きしたことなど、結果的に数回に分けざるえなかったことを、ここにお詫びしておく。

 第一回である今回は身内との対談で、リラックスした様子の一郎氏に注目しながらお読みいただければ幸いである。

   週刊事実編集部




一郎「……テープレコーダーをもってるとあれにゃな、あのツインピークスの……」

三郎「ああ、クーパー」

一郎「そうそう、デイル・クーパー捜査官。

カイル・マクラクランがやってた」

三郎「兄貴たちに、昔から似てるって言われてたけど、そんなかなあ」

一郎「いやいや、お前ガキのころから、ずっとあんにゃじゃん」

三郎「マジで?」

一郎「うん、マジマジ」

三郎「一郎兄貴は真逆だったよな。

なんだっけ、ほら、あの三股」

一郎「お前、よくそんなこと覚えてんな(笑)」

 一郎氏、この後数分間笑い続ける。

三郎「いや、あんなそれこそ絵に描いたようなエロマンガエピソード、忘れる方が難しいよ」

一郎「まあ、確かに(笑)」

三郎「だってにゃ、一郎兄貴がやってた剣道の師範代兼事務員、同級生の剣道少女、嫉妬深いもう一人の同級生の3人全員と、マンガみたいな修羅場ががあったわけじゃない。」

一郎「よくおぼえてるにゃあ」

三郎「剣道少女の『たまき』さんが、オレの直属の上司だった時期があってさ、その時にまあ、いろいろ聞いてた」

一郎「はえ~、本当世の中狭いねえ」

三郎「話続けると、環さんともう一人で、偶然○○○してるとこを見ちゃって、それ見て2人して○○○○してしまったという大変心温まる……」

一郎「いやあ、されはせめて伏字にしといてよ、ゲスすぎる(笑)」

ーそうしてますね(本当に伏字なしときました:編集部)

 一郎氏、三郎氏、同行の編集者の3人、しばらく大笑いして話が中断。

三郎「まあ、本当まちゃくちゃな兄貴なわけですよ、この人は」

一郎「逆にいうけど、オレはなんであんな環境で、三郎みたいな公務員になるようなヤツの育つのか知りたいよ」

三郎「まあ、確かに親父が放任というと言葉はいいけど、まあ地獄のような環境だったよ」

一郎「そうそう、おれは良くぶん殴られてたけど、さっぱり意味わかんなかったもん」

三郎「まあ、それはともかく」

一郎「全然話変えてくるな」

三郎「というか、おもそもこのインタビューじたいのきっかけである事件の話をしてもらわないと、そこの編集ひとも大変だと思うよ、こんな中学生レベルのくだらねえ話ばっかり続いても困るだろ?」

一郎「ははは、確かに」

三郎「で、そもそも被害者のラベールさんとはどう出会ったんだ?」

一郎「うーん、どう説明したものか……。

オレは傭兵会社(注:天京院一郎氏はマーセナリー・インクという傭兵会社に勤めていた)を辞めて、用心棒とかおネエちゃん向けの運ちゃんみたいなことで、日銭を稼ぐようになって、まあそういう連中と付き合いができるようになってな。

そんな時、仕事を仲介してるやつから

『あんたにいい仕事があるにゃ』

という連絡があった。

ちょうど仕事がなくて困ってたオレは1つ返事で

『ああ、いいぜ

で、どんな仕事だ?』

と聞いた。

すると、その仲介人は

『ああ、あんたに名指しで、人探しをしてほしいとよ』

と言った。

『はあ、なんでオレに名指しで、そんな畑違いの依頼が来るんだよ?』

と、オレが聞くと

『さあな。

でも、依頼人の名前が天京院次郎っていうんだけど、あんたの親戚かなんかか?』

と、仲介人は言ったんだ」

三郎「ちょっと待って、なんでそこに次郎兄ちゃんの名前がでてくるんだ?」

一郎「知るかよ。

まあ、とにかく、その次郎からの依頼が

『ラベールという女を探してほしい。

彼女の子供だという娘が、そういったので、わざわざあんたに頼むことにした。

多分、俺たちの知っているラベールと同一人物だ』

ということだったんだ……。」

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