印象

 明日美にとって、まず驚きがあったのは、当のギュスターヴ自身の印象イメージが、話にきいていたものより、で違うということであった。

 要するに

『色んな欲でギラギラしている、恰幅の良い猫』

 というのが、明日美をはじめとした世間一般でのギュスターヴのイメージだったが、今、明日美の目の前にいるギュスターヴという存在は

『一途に何かを求道さがしている、修行僧のような、痩せている猫』

 であった。

 そのギュスターヴは、そういう観察をされてるのを知ってか知らずか

「まあ、そこにすわるにゃ。

 ……ほうほう、俺のボンクラ息子ガキどもと違って顔は良さげだにゃ」

 と、明日美を品定めしている。

「はあ、ありがとうございます」

「顔しか褒めてないにゃ。

 第一さいしょの印象で、性格までみにゅける訳にゃいにゃ」

「……」

「まあ、お世辞を言って取り繕う程度の、頭は持ってるみたいにゃね」

 と、ギュスターヴは一人納得したように頷いた。

「ネリー!」

「はい、にゃんでしょ、ご主人様」

「明日美くんを、彼が寝泊まりする部屋に案内するにゃ。

 あと、お前のご主人マスターとやらは、これからは明日美くんにゃ。

 心得ておくように」

「はい、わかりにゃした」


「それにしても、ギュスターヴさんは思ったより痩せてましたね」

 と、明日美はネリーに言うと、ネリーは聞かれてもいないのに、語り始めた。

「ええ、なにか思うことがあったにょか、この1ヶ月位なにも食べてにゃいし、飲んでもいにゃいのです。

 1ヶ月前に、三男の三郎様からお手紙が届いたにょですが、私は当然、内容なかみはわからにゃいので、推測そうぞうでしかにゃいのですが、ラベールという女についてなにかしらの情報が書かれていたようにゃのです。

 それ以来、あれだけ沢山いっぱいの欲に忠実であったギュスターヴ様は、性欲以外のものがまるでにゃくなってしにゃったかのように、寝もしにゃせんし、食べもしにゃせん。」

「はあ、なるほど」

 と、明日美は、立て板に水のように話続けるネリーの話を話し半分しか聞いていないで、自分がこれから生活する部屋へと、歩んでいった。


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