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「あ、そう言えばマリオ君の事なんですけど」
「マリオ君ですか?」
「ここで会った時、凄い意気投合して。友達になったんです。連絡を取っていて食事にも行ったりして。それで実は今度撮影させてもらうことになって」
「え、そうなんですか?」
劇団の役者であるマリオ君とルカさんが出会ったのは、十月の中頃だっただろうか。ルカさんの隣に偶然マリオ君が座ったのが二人の出会いだ。
「マリオ君、凄いイケメンじゃないですか。初めて会った時から、メイクしてみたいなぁって思っていて」
確かにマリオ君は端正な顔立ちで長身でイケメンで天然で可愛い。俺としてもメイクしたマリオ君を見てみたい。いつも舞台上では化粧はしているけど、そう言うのじゃなくてもっとナチュラルな奴。
「どんな感じで撮影されるんですか?」
「えっと、一応イメージは出来上がっているんですけど・・・でも禁則事項です」
なんてね、と続けたルカさんがあざとい。
「一応秘密にしておかないといけないので。春くらいに掲載される予定です」
「春ですか、まだ先なんですね」
「何言ってるんですかマスター。春なんてすぐですよ」
何言ってるのってそれはこっちのセリフ。ルカさんはまだ若いでしょうに。
「楽しみですね」
「私も楽しみです。発売日、教えてくださいね」
「もちろんです。今から撮影が楽しみで。きっと読者さんも楽しんでくれると思うんですよね。綺麗な男性が紙面を飾るってのもあるけど、男性でもこんなに綺麗になれるんだから、私でも頑張れるって思ってくれるだろうから」
「そうなんですか?」
「そうみたいですよ。俺としても、同じ男でこんなに綺麗なら、俺ももっと頑張れるなって思うし。ある意味勇気をもらえる? みたいな」
そう話すルカさんの表情は心底楽しそうだ。本当にこの仕事が好きだって感じがする。きっと天職に違いない。俺がバーテンダーを選んだように。
「綺麗になるのってちょっと勇気がいるもんなんです。上を見ればきりがないですから。だから、綺麗になりたいって思っている人の背中を少しでも押せたらなって思うんです」
「押せていますよ、きっと」
「そうですかね?」
「だってルカさんの雑誌、すごく分かりやすいですから。男の私にでも」
そう言うと、ルカさんは一瞬目を丸くしてくしゃりと笑った。
「俺、もっと頑張りますね」
十分頑張っていると思うけどな。
「応援していますよ」
「ふふ」
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