動物がいっぱい

流々(るる)

現場(げんば)にて

 今日から、新しいバイトだ。

 面接のときに社長さんが「経験がなくても大丈夫だよ」と言ってくれたけど、やっぱり不安だなぁ。力仕事は自信があるけれど……早く慣れるといいな。


「おはようございます!今日からバイトでお世話になります」

「あぁ、常務から聞いてるよ。真面目そうだし、体力があるみたいだから上手く使ってくれって」

「よろしくお願いします」

「しっかし、体がデケえなぁ。それで足場上れるのか?」

「大丈夫です。こう見えても、木登りとか得意なんです」

「だけど、お前の頭に合うヘルメットがないな……明日までに用意しておくから、今日は雑用だな」

「わかりました!」


 今日から建設会社でアルバイトをすることになったのだ。初日から戸建て住宅の現場げんばで手伝いをすることになった。

 大工の親方さんに教わりながら、頑張るぞっ!



「おいっ、あとでトラを外しておいてくれ。それと、ネコが通るのに邪魔だから、ウマをどかしておけよ」

「!?」

 えっ、なに?何言ってるんだ、親方。

 こんな街中でトラを外したら、危ないじゃないか。

 ネコならほんの少しの隙間で通れるから、ウマがいたって問題ないでしょ。 

 って、そもそもトラもネコもウマもいないじゃないかぁっ!







 休憩時間に、親方が笑いながら教えてくれた。

「悪かったな。つい普段通りに言っちまって。

 トラは黄色と黒のロープ。見た目から来てるんだろうな。

 ネコは一輪車のことだ。ネコ見たく狭い足場も通れるから。

 それと、脚立足場のことをここではウマって言うんだ。前と後ろに二本ずつ脚があるだろ」

 ふーん、そうなんだぁ。最初はびっくりしたけれど、面白いなぁ。帰ったらちょっと勉強してみよう。





 トンボにモンキー、犬走り。色々調べてきたから、今日はどんな動物が出てきても大丈夫だ!

「ヘルメット、そこに用意しておいたぞ。後ろ側に名前も書いてあるからな」

 おお、これが僕のヘルメットか。








「名前:パン田 一郎」

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